- 2016.12.13
第183回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は3件とも医療・医薬関係でした。最初は、(株)TAOS研究所の苗氏から、生体活動や自然現象の「カオス=僅かなゆらぎ変調」をセンサーで捉え解析して医療診断や予防等に役立たせる技術とサービスの説明がありました。2件目は(株)ジーンケア研究所の高橋氏から正常細胞に障害を与えることなく、がん細胞のみを効率よく分裂細胞死(Mitotic death)へと誘導するRecQL1-siRNAの卵巣がんへの適用を目指した治験準備状況の説明がありました。3件目は(株)リプロムの田中氏から生薬「甘草」由来で妊娠成功率を上げるサプリメントの開発状況の説明がありました。特に3件目は、成分もハッキリしていることから事業化への道筋は早いと思われますが、廃棄甘草植物から成分を抽出するプロセスについて特許を取得しているかどうかが不明であるので、類似製品が直ぐ生まれる可能性が高いと思いました。それにしても医薬分野において、日本版NIHとして設立された日本医療研究開発機構(AMED) と規制等を担当する医薬品医療機器総合機構(PMDA)のように類縁の機関があり、かつ本来であれば振興と規制の関係に立つ両者が提携するというような良く分からない仕組みとなっており、また、民間の資金提供者との役割分担、大学・民間の医療機関との関係等土地勘に乏しい者にとっては不分明なことが多いと改めて感じました。
- 2016.12.7
J-TECH STARTUP SUMMITに参加。
― Deep Techに取り組む有望技術系ベンチャーのプレゼンとともに、技術系ベンチャーの支援に何が必要かを議論しようとする場で、会員となっているTEPが主催するものです。基本的な認識としては、Deep Tech(コア技術)はその重要性にも関わらず裏方的で製品化までに時間と人的リソースを多く要することから、シリコンヴァレーでは重視されているにも拘らず我が国では支援対象から外れてしまっているとの危機感に立ち、ハードウェア、組込みソフトウェア、クラウド上の処理エンジン、バイオ技術、先端材料、ロボティクス等を対象に有望なスタートアップを選定して表彰を行おうとするものです。同時にマイクロ波化学(株)の吉野社長からの事業立ち上げまでの苦労話、九州で半導体関連スタートアップを支援しているTEP代表の国土氏のプレゼンがありました。J-TECH STARTUPとしては、風力発電機器の(株)チャレンジ―、スマフォ経由で通話するイヤフォンの(株)BONX、乱数発生素子の(株)クァンタリオン、動画画像収集と解析の(株)Spectee、再生医療用細胞の(株)オリゴジェン、大型部材展開構造解析ソフトのオリガミ・イーティーエス合同会社、ロボット義足の(株)Xiborg、透明な断熱材量sufaのティエムファクトリ(株)が選ばれました。マイクロ波化学の吉野社長からは、クリステンセンのイノヴェーションのジレンマの通り既存の化学業界からは受容されない革新的技術を自前で実証するために建設したプラントの20億円の資金獲得苦労話等がありました。TEP代表の国土氏からは、マイクロ波の事務系CEOと技術開発CSOの組み合わせのようなティームの重要性等の指摘がありました。日本開発工学会のワークショップで取り組んでいる技術系ベンチャーの叢出と育成の問題意識に完全に共通する集まりであり、大いに参考になりましたが、この分野でのVCその他からの資金調達の規模と多様化について突っ込んだ議論をするべきだと思いました。
- 2016.11.25
日本開発工学会第三回総合シンポジウムに参加。
― 「ヨコの包括的相互理解による新結合の創出―協業による市場創造―」とのテーマでのシンポジウムで、昨年と同様に技術ベンチャー叢成ワークショップの状況を説明しました。8回開催したワークショップの概略をごく簡単にして、今回は、ワークショップに参加してもらったEY総研の小川氏、日土地の中村氏から、特色ある報告を重点的にして貰いました。小川氏からは、経験経済という概念で進めている新規の産業分野として、スポーツと観光について、単なる競技場や観光スポットだけでなく、前後のサプライチェーンに関わる多様なプレーヤを繋げることで新規の産業を、アジア・グローバルな広がりで構築しようとしている試みの紹介がありました。中村氏からは、同社の本社のある港区の特色である外資系企業の集積、各国大使館の集積立地を活かし、同時に官庁街のある霞が関との接点も考慮した新しい街作りのアイデアについて苦労話も含めて紹介がありました。いずれも今回のシンポのテーマに相応しいヨコの連携と協業の試みでした。ワークショップの報告を含めての共通のテーマは「場」であって、場に集まることで、ベンチャー支援が可能となり、新規の市場も生まれることとなりますが、シンポでも質問があったように課題は「場」のコストをだれが負担するかということに帰すると思います。シリコンヴァレーでは成功した者がエンジェル、VC等の形で順送りにその費用を負担して次代のためにエコシステムを発展させていると言えますが、我が国では、行政に依存することは支援の選択が狭まり、MINERVAやTEPのような地域のNPO、ARECのような自主財源を持つ機関、三井不動産や日土地のような自社インフラを提供する企業、慶応や早稲田のような大学のインキュベーション施設等々が主体となりますが、オープンでパブリックな場を維持発展させることは厳しいものがあると回答しました。
- 2016.11.22
早稲田大学大学院 環境・エネルギー研究科公開講演会に参加。
― 本庄早稲田に所在する同科における公開講座で、アドヴァイザーをしています(公財)本庄早稲田国際リサーチパークの関係で、講師とも顔なじみで参加しました。特に最初の講師である大聖 泰弘教授が本年で定年となり同地における公開講座としては最後の機会となるとのことで、学生のみならず社会人も多く参加していました。大聖氏からは「次世代自動車に関する将来展望」というタイトルで、運輸部門でCO2が大幅削減を迫られる中、ガソリン車が50Km/Lを実現しないといけない一方で、2050年を睨んでEV、ハイブリッド、水素車が圧倒的なシェアを占めていく見通しについて説明がありました。勝田 正文教授からは、エネルギー効率を高めていく際に不可欠のヒートポンプついて特に寒冷地用ヒートポンプの技術の開発動向について話が有りました。最後の小野田 弘士氏からは、本庄早稲田エリアでの地域エネルギー熱利用プロジェクトの現況を説明し自治体の関与の仕方、全体のシステム設計の留意点等を説明していました。総じて講演自体には時間も限られていたせいか新味はなかったですが、本学と本庄早稲田の2か所で研究・教育活動を継続し、地域との共存を追及する教官の思い入れは感じました。
- 2016.11.17
日本開発工学会第8回技術ベンチャー叢成ワークショップを開催。
― 今回は、信州上田市に所在するAREC(浅間リサーチエクステンションセンター)の専務理事の岡田 基幸氏に、20年にわたる同地での産学官連携、ベンチャー支援の苦労話をして貰いました。同地には戦争中に疎開して以来の機械産業の集積があり、信州大学繊維学部という日本で唯一繊維の名の付く学部があって、岡田さんというユニークな人が手塩にかけて育ててきたARECの課題と今後の展望を聞きました。東京から1時間半弱での距離にあり、都会と地方という二極対比が鮮明ではなくなっているものの、大学発のベンチャー、新規起業という点では、上記の環境に関わらず、これからだという状況でした。ARECの特筆すべき点は、230の会員収入とインキュベーション入居料の自主財源で、ほぼ自立的に多様な支援活動を展開しているところで、並大抵でない苦労があったと思います。若手のユーターン人材も増え大学の技術を使っての起業が増えそうであり、地元の若手事業家が大学教官の知恵と地元中小の機械工業の社長の技術を使って新規事業を立ち上げることも増えそうで、これらにARECが介在しての岡田氏の言う第二ステージに移ったARECの活動の今後が楽しみな内容でした。それにしても、支援家の素質は、前回の今泉氏の場合と同じで、熱っぽく、細かく、対象企業のレベルに降りて、語り、足りない知恵を出し、伴走し、これをしつこく継続できる人材でなければならないことを改めて認識しました。
- 2016.11.15
MCPC第102回勉強会に参加。
― モバイルコンピューティング推進コンソーシアムがオーガナイズしてのセミナーで全く久しぶりの参加でした。最初に、(株)入鹿山未来創造研究所代表の入鹿山 剛堂氏から「ウェアラブルの現状と未来」とのタイトルで、先端を走り話題に上りながら普及しないウェアラブル機器の課題についての話がありました。一言で言えば、ウェアラブルでなければ対応できないとのサービスや利用形態が無いということで、話題は提供してもビジネスとしては広がっていないということでした。同氏は、1988年に日本初の本格的グループウェア「LANWORLD」を独自に開発。1991年には日本で最初のモバイル・コンピューティング(モバイル・グループウエア)を開発。1999年にはNTT移動通信網(株)(現 NTTドコモ)に入社し、2003年に世界初のスマートウォッチ「WRISTOMO」を企画・開発。2013年にNTTドコモ退職。2014(株)入鹿山未来創造研究所設立したという我が国でのシステム開発の先頭を走ってきたような人で、多才多彩と言うべき技術屋さんで時代の先を走り続けた凄い人だと感じました。次の講演は、MtM(IoT)の標準活動を日本を代表して行っているKDDI(株)の山崎 徳和氏から、現在oneM2Mとして纏まりつつある水平方向での共通プラットフォームの標準化の話がありました。KDDIのような大企業を背景に持っていたとしてもグローバルな標準を進めていくには多々苦労があると思いますが、このような公共財は大企業がコストを含めて本気にならないと進まないことを改めて認識した講演でした。
- 2016.11.11
先進自動車技術に関する5大学連携国際シンポに参加。
― The 1st 5 Universities Cooperation International Symposium on Advanced Vehicle Technologyが正式の名称で、日本大学生産工学部・自動車工学リサーチ・センターが中心となり、国内の同志社大・先端パワートレイン研究センター、名古屋大・未来社会創造機構モビリティ領域、米国米国ミシシッピ州立大学・先進車両システム研究センター、韓国全南大学・自動車リサーチセンターの5機関が、日本大の津田沼キャンパスに一同に会したシンポで、学会ではない連携組織の取組みとして非常に興味を持ち参加しました。午前中は5機関の紹介で、午後はミシシッピ州立大学Mr Motoyamaから1DCAEによるボディ構造の早期デザインに関する研究、全南大学Mr PARKから圧縮着火エンジンへのバイオエタノール燃料の応用、同志社大学大学院山本氏からは単気筒ディーゼルエンジンの熱損失低減に関する研究、名古屋大学鈴木氏からは区分的ダイナミクスに基づいた運転行動のモデリングと解析、日本大学景山氏からは先進運転支援システムへの応用に向けた横方向と縦方向制御ドライバモデルの構築の紹介がありました。それぞれ時代のニーズを反映した内容であり、補完と競争の点でも面白い内容でした。Mr Motoyamaは本田にも居たとのことで米国の日系自動車工場の多い中南部の同大で教え、かつ、東大の研究員で、10日にISID CAEフォーラムで講演した東大大富氏と共通のある1DCAEの話で、2日続けての繋がりに驚きました。同志社の山本氏はスバル自動車出身で意欲的に実験解析の話をしていました。名大の鈴木氏は自動車産業の集積する名古屋地域ならでの研究の紹介であり、日本大学の景山氏は本5大学のコンソーシアム構築のオルガナイザーに相応しい広範な目配りと同時に自動運転の制御システムの基礎となるデータ分析等の紹介でした。参加者が英語で遣り取りし、同大の研究施設の見学ツアーでも学生が英語で説明する、グローバル指向の非常に意欲的な取り組みでした。今回に続き次回は米国で開催するとのことで、参加機関の増加と継続を祈ります。
- 2016.11.11
ISID CAEフォーラム“Think CAE 2016”に参加。
― 「さらに進化する“製品開発プロセスへのCAE技術の融合と活用”」のタイトルで、製品の企画、設計、製造、研究、技術管理に携わる製造業の中堅を対象とした技術の動向とISIDの製品紹介を目的としたセミナーでした。今や、製品開発プロセスにCAE技術が無いことは有りえないまで各方面で使われている訳ですが、会場には中堅ではなく新人と思しき若手も多く居て、各社の研修の場としてワークしているのだろうと想像しました。午前中に慶應大のSDM科白坂氏から「システムエンジニアリングとモデルベースのSE」のタイトルで基本的な考え方の講演がありました。元々システムデザインマネジメントの求めるデザイン思考は、HowではなくWhatやWhyを突き詰めるものと思っていましたが、同氏は製品となるシステムの完成ためのHowに重点を置いて説明をしていましたので、違和感が残りました。次に東大の工学系研究科の大富氏から、1DCAEの考え・利用について話がありました。1D CAEはある製品においてまだ形がないものをターゲットに仕様を検討する際の数学モデルベースでの解析を行うことを言うようですが、同氏は東芝の経験を背景にこの分野での著書もあり、日本人の不得意な抽象的思考を支援するシステムの話ではないかと想像しました。後は同社の扱う各種の解析ツールの紹介、利用に関しての講演を聞きました。結論的には、ツールは(殆ど米国製としても)今や豊富にあり、課題はどのように使いこなせるかにあると同時に、Howの世界は飽和してきている一方で、我が国の製造業の飛躍のためにWhat、Whyを議論する場が更に必要であることと製造業の自己革新を如何に図っていくかのHowが全く欠けてることに、改めて思いを致したところです。IoTからAIやIndustry5.0等が話題になってバスに乗り遅れまいと右往左往している中で、我が国の製造業が革新性を自ら生み出せるのか、大きな議論が必要だと思います。
- 2016.11.9
「イノベーションにおける「場」の本質」コンファレンスに参加。
― 富士通総研の主催で、企業のオープンイノベーションや社会活動における共創・協創等,一組織の中で完結しない課題が増え、多様な主体が集まって一つの課題を解決していくための共創等の場への関心が高まっていることを反映しての企画でした。最初に多摩大の紺野氏から、このような社会的経済的要請を受けて組織ではなく個が活動の主体となり、個が集まり刺激しあうところ(場)から知識創造のイノベーションが生まれるとの基調的講演がありました。ただ、大きな問題意識は全く同感ですが、個々の各論としては、大企業がオープンイノベーションに取り組む際の場作り、場のマネジメントに重心の置いた内容となる点に違和感を感じました。次に同社の西尾氏から欧州で中心のLiving Labの活動の紹介がありました。企業、市民、行政がパートナーとなって共創的に製品・サービスを開発していく場としてのLiving Labの試行錯誤の事例が多く語られましたが、やはり、企業の商品開発のための利用が円滑に進むかどうかの視点が先行している気がしました。後半は、個別の活動事例として、社内の製品開発等に「場」を中心に置く前川フィロソフィを前川製作所の岩崎氏から、オフィス用機器・器具のハードの提供からオフィス空間作り・社内勤務形態の在り方等のソフトの蓄積を重ね更に組織外との第三者との共同作業を行う場作りのソフトを提供するコクヨの斎藤女史、市民参加で社会ニーズに応えた活動を行おうとする福岡市の「おたがいさまコミュニティ」の活動を運営受託の九経調の南氏から報告がありました。なかでもコクヨの斎藤女史からは、長い間の社内でのノウハウの蓄積と他社の場作りに参画した経験に基づいた的確な意見が出ていたと思います。全体を通して、企業のオープンイノベーションのための場作りという視点が前面に出てしまったと思いますが、その際においても最も大事なことは、場作りが継続し成果を産み出すためには根本的な目標の明確化(何のために場を設けるのか)、トップのコミットメントが必須であることが講師共通の意見であり、同感できるところです。
- 2016.10.27
シンポジウム「価値ある新事業・新製品開発のためのコンセプトデザイン」に参加。
― 慶應大学院システムデザイン・マネジメント研究科主催の公開シンポで、従来の延長線上にはない新事業展開や新製品のコンセプト作りをどのように進めるべきかを探索しようというもので、最初にリコーの環境事業開発センター所長出口氏から、国際化に伴って一度は閉鎖した御殿場工場を「リコー環境事業開発センター」として再生し新規事業の拠点とした経緯とその間の苦労の紹介がありました。プリンター部品の再生加工の工場としてだけではなく同社の環境関係の研究開発拠点、さらには従来の同社の枠を超えた環境事業の拠点として最初のコンセプトを明確化して以降の開所までのプロセスについての非常に具体的な話でした。コンセプトデザインの適例としてのみならず我が国の製造業が国内拠点を如何に活性化し地域と共存していくかの良い教材だと思いました。次に(株)iTiDコンサルティングのチーフエクゼクティブコンサルタント北山氏から「失われた20年を経て〜これからのコンセプトデザイン〜」とのタイトルで、プロセスイノベーションに陥る我が国企業がプロダクトイノベーションを具体化していく手順を、本質的ニーズ、価値化、対象、手段等の要素に分けて説明をしていました。日頃のコンサルの実践で検証された手順だと感じました。最後に同大の西村教授から、コンセプトをデザインするとは何をすることなのかをINCOSE SE Handbookをもとに紹介がありました。時間を掛けてでも企業ミッション等の原点に戻ること、何が問題であるかを明確に具体化すること、価値観と方向性を共有すること、同時に幾つかの具体化の節目におけるイグジットを想定すること等、当たり前と言えば当たり前のことを限られた時間の中で実行することだろうと思います。そうなると出口氏も言っていたように「人だ」ということになりそうです。
- 2016.10.25
先端IoTアプリケーションが拓く新ビジネス創出セミナー2016に参加。
― 港区企業間連携支援事業として電通大のTLO的組織であるキャンパスクリエイトが実行しているイベントです。最初に経産省商務情報政策局情報経済課から先端的IoTプロジェクトの支援としてのビジネスプランのコンペとマッチング等を行うIoT推進ラボの紹介がありました。官邸主導で動いている規制改革等の政策を受けて経産が直接実行しているプロジェクトで、本省が直接このようなイベントを行うことに驚きを感じました。大学からの技術の発表としては、関西大学の滝沢氏からスマートフォンとBLE(Bluetooth Low Energy) デバイスを使ってGPS等なしで人とモノの位置を見える化する自律型屋内測位技術「Smart Finder」、電通大の小木曽氏から暗号化情報をそのまま使ってインフラや工場設備の制御をリアルタイムに行うセキュリティ技術の説明がありました。前者は実証はそれほど難しくなく駅などの防災対策に使われると思いますが、後者は実際のインフラ等での実証をどのようにするか難しいところだと思います。企業からは、(株)Phone Appliの山本氏から、ドライバーや工事現場作業者の健康状態等を装着型デバイスで遠隔から把握し突発的事態に対応可能とするコラボレーティブIoTの事業、(株)博報堂アイ・スタジオ望月氏等からRFID等を使って生産農家の声が流れるお喋り野菜やインターハイの全試合を飲料メーカーがスポンサーとなってPC等で提供するサービスのように先端技術を広告に利用する広告新商品開発事業の紹介がありました。(株)ハタプロの伊澤氏からは、製造業系のベンチャーの資金対策等の問題に触れながら、ITを使ったハードの設計・試作から量産、販売までの助言を行う39Meisterというサービスの説明をしていました。NTTドコモとのジョイント事業ですが、若い世代の伊澤氏が、ドコモと連携しているとはいえ、ハードの設計試作から量産・販売までのコンサルをやろうとすることに意外性を感じました。最初は純粋のインターネット利用の就活支援事業を始めたようですが、事業展開がITを使った製造業の方へ寄ってきていることに興味を覚えます。
- 2016.10.20
NEDO TCP(Technology Commercialization Program) 2016 ピッチコンテストに参加。
― NEDOの技術シーズを基に起業・事業化を支援する制度で、書類選考でまず22者・社絞り、研修・メンタリングを行ってビジネスプランを発表させ、スクリーニングを行って年末に最終発表を行わせる、というものです。多様な分野の先端技術の事業化をNEDO認定VCや登録支援者が支援する規模としては大きく、また、NEDOが別途進めているオープンイノベーション協議会とも連動させていて、考え方としては意味があると言うべきものかもしれませんが、残念ながら、総じて大学研究レベルのものが多くこれらを一挙にVCの資金を入れて事業化を図るには時期尚早というものが多いとの印象でした。また、社会インパクトも大きく是非進めていくべきと思われるものも技術としては殆ど未完成で、ピッチコンテストではなく、NEDO等の公的制度を使って研究・技術開発を進める方の支援を行うべきではないかと感じました。更に、比較的実用化が近いものはIT利用となってしまい、改めて我が国における技術指向ベンチャーの支援の難しさを考えます。NEDOは日本総研に運営を委託しており、責任体制もハッキリしない中途半端な印象を拭えず、今後政策的にどのように進めて行こうとしているのかも気になるところでした。
- 2016.10.12
第4回GPICシンポジウムに参加。
― 我が国が優位性を維持していると言われているグリーンパワーデバイスの技術を事業化の成功に如何に結び付けるかを議論する研究会の全体シンポで、最初に研究会の会長であり(株)ソシオネクストのCEOである西口氏から「技術を活かす経営」の実践として、新生の同社において、システムLSIのハード設計から、ソリューション提案をベースとした設計に舵を切っている状況の説明がありました。西口氏以外は富士通とパナソニックの出身者で、彼ら2700名が退職で退路を断った上で、新しい事業モデルで利益の出る会社としていけるのか、壮大な実験ですが是非実現をして貰いたいと思います。トヨタ自動車(株)のパワーエレクトロニクス開発部主幹の戸田氏から、2050年にはガソリンエンジン車が無くすという事業戦略のうえで、中心となるEV、FCV等の基幹となるパワーデバイスの開発状況を、新しいプリウスを例に説明していました。累次の研究会で多くの技術者から課題として提起された耐熱性や小型化を解決しつつ新プリウスに搭載しているとのことで、研究会の外で着々と進められた現実に些か鼻白むとともに、先に研究会で発表したように利用分野でコアとなる者と如何に連携を作ることが重要かを実証できたように思いました。東大工学系研究科の阿部氏から、パリ協定が世界的に発効し新エネルギーの導入を加速していくうえで、分散電源の導入の基礎となる小グリッドのネットワークを効率よく安定的に稼働させるための技術開発の方向(彼はスマートグリッドと呼んでいますが)を、ハードの開発と、ハードとは独立してソフト・システムとして開発していく部分に分け、パワエレのソフト・ハードの分離がもたらす革命として、説明していました。昨年来の開発の進捗状況の説明でしたが、電力にIPアドレスを付してマイクロセカンドオーダーでコントロールしていくとの考えに早い実用化を期待したいと思いました。遺憾ながら、電力の分野ではトヨタに該当するコア事業者が居らず、実証も引き続き海外(アフリカ)で行われるため、阿部氏の意欲(新エネ導入に対するニーズと世界的義務)に関わらず我が国での実現はまだまだ先になると思います。
- 2016.10.11
第181回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 最初の発表は、Aloha Cattle Companyの南谷氏から、狂牛病等の疾病から隔離されているハワイ島でFBS(牛胎児血清)やBDRMS(牛由来医薬品原材料)を製造するとともに副産物となる牛肉を日本にも輸出する計画の説明がありました。観光以外の産業がないハワイにおいて雇用の機会を創り出そうとする考えには同感できますが、事業としては対日ではなく対米本土向けとして資金を集めた方が早いのではないかとの気がします。2社目は日本ビジネスリード(株)の最首氏から、過去10年以上の上場企業の幹部の氏名・異動履歴・経歴等のDBを基に組織名や部署名から幹部を検索できるクラウドサービスの説明がありました。営業担当者が訪問したい相手方は幹部の下のレベルなので、そこを見つけ出せるDBであれば意味があるのではないかと感じました。最後にゴマブックス(株)の赤井氏から、出版業界の低迷と電子出版の潮流の中で、一度倒産した後、電子出版向けコンテンツの企画・編集・製作、アマゾン等との繋ぎと販売をコアに会社の再生に取り組んできた激動の話がありました。特にアマゾンのプリント・オン・デマンドと結び付けることで同社のような中小出版社が在庫を持たずに事業展開できる可能性を実証したことは素晴らしいと思いました。長年参加してきた伊藤氏主宰のE-パブリッシング研究会で多くの先駆的事例を見てきましたが、いずれもアーリーアダプターとして事業化しておらず、同社のチャレンジと復活に敬意を表しました。
- 2016.9.29
日本開発工学会第7回技術ベンチャー叢成ワークショップを開催。
― 第7回は、東京コンテンツインキュべーションセンター(TCIC)インキュベーションマネージャー(IM)でTSI株式会社インキュベーションプロデューサーの今泉 裕美子氏から「ベンチャーを支える―今、必要とされる支援、役に立つ支援者について考える―」とのタイトルで、支援家のあるべき資質・行動等と、あるべき支援家が増えていくための方策について講演をして貰いました。今泉さんは映画の世界を振り出しにコンテンツの世界に身を置き、東京都が設置するTCICの責任者ですが、スタートアップの中に飛び込んで悩み・問題点を把握し、具体的なソリューションを提案し、ユーザや資金提供者を紹介し、スタートアップのコンソーシアムを作ることで能力を高め、海外の市場へのアクセスとして台湾等のインキュベーション・センターとの提携を実現し、と精力的な支援活動を紹介していました。本人も言うようにその実践活動は製造業等の他業種に共通することを強く実感しました。貴重なノウハウをどのように横展開していくべきかが課題です。更に、支援者の層を厚くし若手が参入していくために、活動のカッコよさ・我が国活性化の必須の役割・ある種の万能選手というような支援家のブランド化を図るべきだと提案がありました。課題はその具体化で、ワークショップの取り纏めに際してはその内容を明確にしていくべき宿題が出たと思っています。
- 2016.9.13
第180回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は3社で、最初は日本グローバル照明(株)の佐藤氏から、従来の産業用・工事用照明商品展開から災害時用の特殊LEDライトの開発を進めており、製品コンセプトを共同で具体化するパートナーを探しているとの説明がありました。リチウム電池を内蔵した可搬性の製品であるためキャンプ・レジャー用から各種イベント用まで広い用途が見込める面白いアイデアだと思いました。専門商社に依存するのかイーコマスで自社販売するのかが課題だと思いました。2社目はサムテック・イノベーションズ(株)の高本氏から岡山県津山市を拠点に製造販売を行ってきた食品加工工場等向けステンレス製器台ベルトコンベヤーに輝度と色彩を制御できるLEDランプを一体化した異物の光源検品コンベヤ・テーブルの紹介が有りました。国内のユーザが増え東南アジアに展開を予定しているとのことです。今後、医療用手術用無影灯及び臨床検査でのバックライトRGB/LED光源機器の開発を予定しているとのことで、先般の埼玉での集まりを上手く使えれば面白くなると思われます。最後に島崎電機(株)の濱村氏から水の電気分解とイオン交換をベースにした独自の技術により、特別養護老人ホームの感染予防等目的で販売している洗濯水製造装置の小型版として開発した手指洗浄器の説明がありました。レンタル商品として売り出すための提携先を求めているとのことでした。原理の説明が無くインパクトに欠けた点が残念でした。今回は、既存技術を使って一ひねりする点に特色のあるベンチャー企業というところで、我が国での製造業系ベンチャーの生き方の一つかもしれないと思いました。
- 2016.9.12
Corporate Startup Innovation Series - Tokyoに参加。
― 偶然ですが、NEDOのシリコンバレー・オフィスが仲介し、みずほ銀行本店がスポンサーとなった米国のアクセレーターである500Startupsのフォーラムに参加しました。NEDOが主体となって進めているオープンイノベーション協議会の大企業会員に声を掛けて各社の担当者を集めており、英語でのプレゼンに関わらず同時通訳不要の担当が多く、流石に我が国の国際化も結構進んだものだと認識しました。しかしながら、講演はシリコンバレーでの500Startupsの活動状況、支援の仕組み、米国大企業による買収事例等の紹介であり、500Startupsの狙いが良く分かりませんでした。英語理解力の問題は有りますが、いわば技術動向のデータベースとして利用してはどうか、マーケティングの場として利用してはどうか、500Startupsの関連ファンドに投資をしたら儲かる、個別のStartupに投資してはどうか、技術人材を獲得できる手っ取り早い方法である、等々の説明をしていたと思われます。結局、現地シリコンバレーに資金と決定権限を持たせたオフィスを有する日系企業であれば意味はあるのかもしれませんが、東京本社側の企画部門やCVC担当に説明しても意味のないことだと感じました。500Startupsの日本駐在担当者は、日本の個別企業に投資をしたいと言っていましたので、これなら理屈は通っていますが、この会場に集めるべき聞き手は違うので、最後まで良く分からないまま終わりました。
- 2016.9.6
ストラタシス「3Dプリンティング・フォーラム」に参加。
― 米国の3Dプリンティングの企業であるストラタシス社の最新の製品を紹介する場で、同社の原点的な大きな柱となっている熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling)の応用事例等の紹介を聞きました。同技術は基本特許が切れたために急速に普及しており安価な装置も市販されるようになってきているので、様々な試作モデルが安価で短期間にかつ発注者側の言わば手許で製作されるようになってきたことを確認できました。講演のなかでは、米国の担当者が、繊維複合材料(FRP)の成形も同社の装置を使って可能となったと説明をしていた点が非常に気になりました。これが事実であれば、現在の飛行機・自動車のFRP利用部品は非常に大規模な装置で手間がかかる作業を経て製品化されているので、大きなプロセス革命が起きることとなります。
- 2016.9.2
ジャパントラックショー2016に参加。
― 横浜のパシフィコで開催されたトラックの実装ボディー等の展示会でした。規模は小さいですが、巨大な輸送用トラック、キャリアカー、ロードサービスカー等々楽しい内容でした。実装ビジネスは初めて聞く企業が多かったですが、個別ニーズのカスタマイズをしていくことでユーザとの強い関係を有している中堅・中小企業であろうと想像しました。ただ、カスタマイズとの点では海外展開は厳しいと感じました。現に中国のメーカーが日本に参入した代理店が出展しており、市場の小さい我が国からの進出は難しいと思います。参加者は、運転手さんから子供連れの家族まで、面白い雰囲気の展示会で、写真もたくさん撮りました。
- 2016.9.1
「医療イノベーション埼玉ネットワーク」第4回医工連携セミナーに参加。
― 事務局が埼玉県、さいたま市等で一般社団法人日本医工ものづくりコモンズとの共催のセミナーでした。ソニー、テルモを経て独立し山梨大学客員教授・宇喜多白川医療設計株式会社社長である宇喜多義敬氏からは「薬機法から考える実践的な医療機器開発」とのタイトルで、薬事法が改正になり新法のスキームとその利用方法・審査手順等の説明がありました。新法の体系的な説明を聞く機会が無かったので助かりました。同社は数少ない設計受託会社で、インテグラルで自社主義の我が国医療機器メーカーの体質についても言及がありましたが、組織原理だけでなく旧薬事法の体系・運用にも起因しているようです。また、自動車部品等のメーカーから非常な苦労を経て医療機器分野へ参入した栃木県の株式会社スズキプレシオンの代表取締役会長鈴木庸介氏からは「異業種から医療機器開発へ挑戦して学んだこと」とのタイトルで極めて具体的に、従来のビジネスの限界、数度のチャレンジと失敗の内容、海外に飛び込んでの欧米企業との関係作り、審査対応実務、企業連携等々の生々しく説明がありました。非常に説得力があり、支援家にとってはそのままマニュアルになる話でした。非常に参考になりましたが、50歳ぐらいからの転身のリスクを会社を説得し、全社員を引っ張っていったエネルギーに脱帽しました。更にセミナーの進行とモデレータが、慶応の名誉教授、早稲田のナノ・ライフ創新研究機構客員教授谷下一夫氏で、同氏も非常にプラグマティックに起業連携と新規参入に熱意を示していました。上記コモンズの常任理事でもあり、慶応と早稲田の両方の文化を経験し中小企業支援、技術ベンチャー支援に情熱を持った同氏と知り合ったことも成果でした。
- 2016.8.30
慶應義塾発ベンチャー成功の法則第2回セミナー「ベンチャー国際化のススメ」に参加。
― 慶応のFINEが主催する「日本発のイノベーションを世界に」広げていくにはどうすれば良いかとの問題意識でのセミナーでした。医学部岡野栄之教授の脊髄損傷・脳梗塞の再生医療技術を使った脳の再生治療に挑戦するサンバイオ株式会社社長の森敬太氏からは、当初米国の規制と資金需要から米国で創業した後我が国の再生医療の新規制法の成立を受けて本社を日本に移し上場を果たした経緯を説明していました。当初は米国でこの分野でのエキスパートを採用し立ち上げを可能としたメリットを強調していたと思います。ゲームの株式会社アカツキ社長の塩田元規氏からは30歳代で会社を成功させるという長期計画で卒業後一環として起業、事業拡大と進んできた経緯を説明していました。起業も国際展開も当たり前との説明でそのエネルギーは凄いと思いましたが、多国籍の従業員が200人を超えてくるとどのように企業文化を維持していくのか、内部のイベント等の工夫をしているようですが、製品が柔らかいコンテンツであるだけにこれからの運営が大変だろうとは想像しました。またスタートアップの経営の経験もある総合政策学部琴坂准教授からは、ボーングローバル企業という身軽にアウトソース企業を徹底的に活用して国際的に事業展開を行う事例の紹介が有りました。重たい装置を介在させて実用化を図る技術ベンチャーではないものの、世界各地から部材を調達しアッセンブルしたハードとソフトを一体化させたビジネスを行う日本の企業も増えているとのことでした。要は、結局、人材の問題になってしまいますが永遠の課題と言うことだと思います。
- 2016.8.25
イノベーション・ジャパン2016に参加。
― NEDOとJSTが開催する恒例の展示会です。エネルギー分野のプレゼンを2社聞きました。最初はユーグレナ社で、ミドリムシの大量培養による補助食品を事業化している訳ですが、ミドリムシ自体は300年近く研究の対象になってきたもので多くの知見が蓄積されてきた上で創業者が世界の貧困家庭への食糧化を動機として大量培養技術の確立に至ったとのことでした。更に原油油田からの随伴水と排出CO2を培養培地に有効利用するためにNEDOの制度を使って大規模開発を進めているとのことでした。これがジェット燃料のバイオ燃料代替に繋がるわけで、全体のうまいストーリー作り、既事業化分と開発途上分のうまい分担化に改めて感心しました。もう1社は、電磁式ダイアフラム方式のブロワ生産販売を行っているテクノ高槻社で、同社のブロワ技術を燃料電池のエアポンプに、更に水素自動車のエアポンプに応用開発してきた話でした。もう1社、FAとロボットを一体化して開発している工業ロボットのスキューズ社のデモを見ました。多様な工程に既に導入されているとのことですが、目下最もニーズが高いのが農業の収穫ロボットで異業種への参入の機会に熱くなっていました。
- 2016.8.4
IIP知的財産研究所Mr.Sheff招へい研究者研究成果発表会に参加。
― 久しぶりの発表会への参加ですが、今回は商標のデータ分析とその示唆するものというはじめてに近いものでしたので、関心を持って参加しました。従来の招へい研究者の大方は特許について我が国と各国との法制度関わる分析を発表してきましたが、Mr.Sheff(米国St.John大学法学部教授で、米国では既に特許・商標について分析をしているとのことでした。)は我が国の商標の入手可能な原データを特許庁等から得て、出願人の国籍や分類、存続期間等をクロスチェックし、各国データに基づく分析との比較を経て、その意味するところを経済学的に、商業的に、文化論的に読み取ろうとするものだと理解しました。特に、国際的に出願の流れがどのようになっているかを見ることによって企業のグローバルな活動のみならず、当該国市場のグローバルな重要性等が浮かび上がるとともに、制度調和・国際制度の確立に向けての基礎資料も得られることとなり、今までにこのような分析が公的になされていないことが不思議に感じられ、いい機会でした。
- 2016.7.22
日本開発工学会第6回技術ベンチャー叢成ワークショップを開催。
― 第6回は、(株)MMインキュベーションパートナーズ代表取締役で慶應義塾大学政策メディア研究科特任教授の宮地恵美氏から「大学発ベンチャーを創出する風土―起業支援の大学同窓会活動と大学でのアントレプレナー教育を実践してきた立場から、大学発ベンチャーを輩出する風土について考える―」とのタイトルで講演をして貰いました。慶応の風土の原点は福沢諭吉氏の産業振興・殖産新興・実業界との関わりにあり、福沢は大学内研究から事業を産み出すよりも、中央や地域で活躍する多くの卒業生を意識して彼らに情報や人を引き合わせビジネスを産み出していたとのことで、メンター三田会もこの延長にありボランティアで寄付金を募っているとのことでした。大学周辺からベンチャーを産み出すためには、そもそものベンチャーを創りたいと思う根源的な思いが必要だと実感しており、国から何かをして貰うのではなく自らが何かをして国を支えるという考えに立って、学生起業家が法律に触れない限りその活動を応援する教員が多いとのことでした。代表事例のスパイバー株式会社は、最初は技術もビジネスモデルも無くチャレンジ精神で進んで行ったものを周辺も出来るか出来ないか分からないからこそ応援しようとのことで、成功している・やり切っている学生起業家には、裕福ではないが比較的恵まれた家庭で幼少期に自由にやらせて貰って根拠なき自信を持って怖いもの知らずに突っ走れる要因があるとの話でした。誠に慶応らしいというべきかも知れませんが、湘南藤沢と本学の理工学部との差があるような気がするものの、装置介在型の技術ベンチャーが何社も輩出していることを考えると、若い世代の起業家の気質・素質を改めて考えなすべきだと感じました。
- 2016.7.21
第17回GPIC研究会に参加。
― グリーンパワー半導体の技術開発の現状と将来のビジネスを考える研究会で、今回は、アナログ・デバイセズの日本法人社長である馬渡 修氏から「アナログ・デバイセズのマーケティング戦略―生存競争の激しい半導体業界で、成長し続ける理由―」と称する講演を聞きました。同社は1965年に米国の東海岸で設立され西海岸SVでのベンチャーの動きよりも古い歴史を有していますが、計測・通信インフラ・自動車・医療機器等の産業機器中心に2万の製品を擁して、売上34億ドル、純利益率20%の実績を上げているとのことでした。成功し続ける要因は幾つもあるようですが、対コンシューマー向けの少数大量生産を指向しない、アナログ素子のコア技術の高度化を維持するために対売上R&D 比20%を継続する、既存分野の事業責任は事業部とCEO、新規事業創出の戦略はCTOと明確に責任を分ける、半導体の集積高度化に対応した製品作りにはTSMC等の外部を使い各種の要素技術・部品を組み合わせる高付加価値製品は自社内で利益を維持する、アッセンブリは外部に出すものの価値を付けられるテスト工程は社内を多くする、デバイスの販売だけでなくソリューションを提供する等々の話が有りました。世界中でビジネスを展開しながら従業員は約1万人で半数がエンジニアであることから、英語等の共通言語が有り機動的に現場のエンジニアが情報・ノウハウ等を共有をしながら顧客に対処できる社内の仕組みも整備されているのだろうと想像しました。
- 2016.7.21
アーネスト人材育成財団の技術経営人財育成セミナーに参加。
― 本財団は日本開発工学会のエンジニアリングブランド研究会の小平氏が専務をしているところから内部の勉強会に参加しました。日立出身で(株)産創コラボレーションの代表である小林 守氏から、ハイテクベンチャーを除くモノづくり中小企業が引き続きグローバル化の中で生き残り発展していくための経営者の資質を、同氏が接してきた52社のトップの特色から抽出して整理した話でした。結論としては、変化に対応して顧客の課題・ニーズを掴み製品化する力と社内体制・組織改革能力を有している。外部資源を活用しながら技術の高度化を図っていくものの得意分野を絞り多角化を求めない、技術出身であってもキャッシュフローを把握し管理会計を整備させている、組織を牽引する能力・人的特徴を有することは当然として事業の発展と地域・社会の発展を一体的に捉えられる識見を有していること等を挙げていました。これらに目新しさは無いものの従来から色んな文献・レポートで指摘されてきたものであり、ファンダメンタルに重要な点であることを改めて認識しました。拝聴しながらこれらの根底にあるものとして、部下を信用して任せられる性格であるのか、何もかも自分で処理しようと考えてしまう性格であるのか、の差があるような気がしました。また、小林氏が何故ハイテクベンチャーを除外して分析をしたのか、改めて疑問に感じたところで、何がその理由であろうかと考える次第です。
- 2016.7.15
日本開発工学会第31回エンジニアリング・ブランド研究会に参加。
― 開発工学会の小平氏が主査を担当する研究会で、久しぶりの参加です。同氏は、当初のブランドの基本機能とは何かから出発し、エンジニアリングとは何か、顧客との関係でのエンジニアリングとは何かの検討プロセスを経て、事業にはハードウェア・ソフトウェアの他に人間の感性や心、やる気等の人間力であるセンスウェアの3者が関わってくることを提唱しています。この広がりの中で、今回は鈴木氏からの「不動産仲介事業者のセンスウェア」、永井女史の「老舗女将のセンスウェア」、辻女史の「社会人に求められるセンスウェア ―ビジネスマナーおよびテーブルマナー」の報告が有りました。最後に小平氏から「ブランドを支えるエンジニリングセンス」として、新聞のミニ広告、経営理念、ホームページなどに見る会社の特徴と強みを伝えるエンジニアリング・ブランドメッセージを事例に取り上げ、そのメッセージに込められたセンスウェアついての報告が有りました。研究会の場が広がっている中でセンスウェアとは何か、ビジネスの発展等に関わるハード・ソフト・センスの役割は何か、等理解が難しいところも有りますが、現実のビジネス・組織集団の活動には、建物や機械装置等のハードウェア、プログラムやマニュアル等のソフトウェア、従業員や経営者等の人材に係るセンスウェアの3要素が必要であり、これらを一体的に効率よく、発展させていくものがエンジニリングであると考えると理解できるのではないかと考えました。
- 2016.7.12
第179回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は恒例の国内企業3社の発表に加えて、韓国技術ベンチャー財団がオーガナイズした韓国企業3社の発表がありました。第1社目の(株)プラントライフシステムズの松岡氏のプレゼンに関しては先にMINERVAの責任者である呉さんから話を聞いていましたが、農業の自動化(本技術はトマトの成長の過程をモニターしつつ予め、予測しプログラム化した育成の手順に従い自動栽培をしようとするモノ)に陥りがちな工業製品的機械化を目指すのではなく、品質の一定のバラつきを前提に程々の性能の格安センサー等を開発導入してプログラムの方で目一杯制御する発想の転換に基づくビジネスであると改めて理解しました。2社目のメスキュー(株)の鍵山氏は産総研出身で、臨床用細胞製造の経験と実績を前提に、低フォスファターゼ症の難病治療のための再生医療用間葉系幹細胞等の細胞製造を行おうとするものです。何時も感じるのは難病治療のための再生医療等がヴェンチャーに委ねられていることで、小回りの利く問題意識の尖鋭な研究者等が担うことは正しいとしても巨額のリスクマネーを民間に委ねてしまうことはおかしいのではないかと言うことです。3社目はイヤホンコードが劇的に絡まなくなる便利グッズを製造販売するピークフィールド社峯野氏のプレゼンでした。アイデアは良くても直ぐ模倣される製品ですので、PCT出願、即、世界での独占権取得と誤解していると思いながら聞いていました。韓国の企業は、車載電子制御ユニット用ソフトウェアの世界的プラットフォームであるAUTOSARに基づくSaaSの開発ツールや研修サービスを提供する(株)ポップコーンザー、既存の水道設備に節水機器を簡単に付加接続して節水を実現するデミオジャパン(株)、造船・海洋プラントの3次元CADの設計受託・研修受託を行うYNK Engineeringの3社でした。何れも元気な若手経営者ですが、1番目は日本のインテグラル指向の自動車業界が外部の開発ツールを抵抗なく利用するだろうか、3番目は日本の造船会社はまだ2次元CADに拘っているとのことで果たして本当かと思いつつも、ひょっとしてと感じたところでした。
- 2016.7.8
第8回販促EXPOに参加。
― ビジネスコーディネータをしているTSI(テクノロジーシーズインキュベーション社)が関わっているオーエスエスジャパンが出展しているので、同社のブースを見てきました。元はイスラエルのヴェンチャーの技術で、4ケタの数字を特定の企業・組織等に結び付け、その4ケタの数字を電話すると当該組織のHPや代表電話・交換台等に繋がるというものです。東京オリンピックにおいて海外観光客や国内の応援者が2020をダイヤルすると必要な情報にアクセスできるというもので、我が国以外では既に実用化されていますが、我が国ではキャリア(NTT、KDDI等)が何故か実用化に動かず、その中での出展で、苦戦していました。同展示会そのものは、ノヴェルティや店内販促イベント・グッズが多く出展されており、こういう展示会もあるのだと初めて理解しました。
- 2016.7.7
JST東北大新技術説明会に参加。
― 今回は東北大の説明会で、触覚・触感に関わる計測技術、ソフトウェット電極で創る生体親和デバイス、高硬度・高靭性で高耐熱性の超モリブデン合金、粒子共存重合による高分子表面機能化フィラー、イオン交換樹脂を触媒・吸着剤とする油脂の徹底活用技術の5件で医療分野から金属材料合成にまで渡っていますが、基本は東北大の伝統的な材料技術を出発としたものだと理解しました。触覚・触感に関しては他にない事例ですし、コンニャクの様な水分が80%近くある材料を使うデバイス、特定機能を有する高分子で材料表面を塗布するフィラー、廃油脂中のエステルやビタミンEイオンを回収する交換樹脂法は、材料特性をうまく使って一定の目的を達成しようとするもので、全体に参加者は非常に多く、関心の高さを示していました。超モリブデン合金も、航空機エンジンへの利用を想定した実践的なものでした。いずれも実用化に向けてユーザ企業との連携が必要になりますが、大学としてターゲットを明確化しかつ広がりのある学術研究であり、同大学のような明確な考えに基づく産学の連携が非常に重要であり有効であることを示した良い説明会であったと思いました。
- 2016.6.22
電気通信大学産学官連携DAYに参加。
― 恒例のオープンキャンパスの行事で、今回は、知能ロボティクスのセミナーを聞きました。義手や義足の医療器具を装着者自身の意思に基づく生体情報を使って操作させるロボットの開発状況の説明がありました。多関節の義手を健常の他方の手の動きに合わせて動かす技術の開発は前から説明を数回聞いていますが、いよいよ本格的に患者が装着して日常生活を過ごせる直前まで来ているようです。特に先天的に手や腕が欠損している児童が義手を使って玩具等を両手で掴んで遊んでいる姿には感激しました。また、多様な物体・器具等を見る・触れる・触れた際の音を聞く(視覚・聴覚・触覚)情報を基礎にし、与えられた言語(名称)と結びつけて学習していく知能ロボットの紹介にも驚きました。与える名称が正しいとすれば、反復認識によって、画像を見て何であるかを答えるようになっていくプロセスから、プログラム次第ではロボットが学習していくことは可能であることを実感しました。行事自体は少しずつ規模が小さくなってきているようですが、経年参加していると技術の展開が良くわかる場だと評価しています。
- 2016.6.21
JST関西学院大学新技術説明会に参加。
― 理工学部環境・応用化学科の田和教授の波長オーダーの周期構造を金属薄膜でコーティングした基板であるプラズモニックチップを使い基板上の蛍光分子の蛍光を明るくさせて既存の装置・試薬を使っての情報取得の効率をあげる説明に興味を持ちました。近畿には有力な分析機器メーカーが多いので地元での連携が先行しているのではないかと思いながら聞いていました。同じく谷水教授の素材の個体識別情報(一種のトレーサビリティになります。)を微量元素の濃度と同位体存在度から把握する技術の説明がありました。既に、考古学では鏡の産地が中国か我が国かというような点で使われていますが、素材や食品の産地の特定、汚染物質の発生地の特定等に有力な手法になるとのことです。他にはラマン分光法を用いて生細胞を壊さずにスクリーニングする手法、薬理活性物質等のスクリーニングする手法の照会が2件ありました。全体に発表案件は少なかったですが、特色のある技術の説明でした。
- 2016.6.8
2016国際食品工業展に参加。
― 最近、食品関係の案件に接することも多く、東京ビッグサイトで開催の食品加工機械が中心の展示会に行きました。街のお菓子屋さんが使う昔ながらの機械から、食品加工大手が工場で使う自動化された機械まで、多様な機械を間近に見ることができました。面白いと思ったのは、関西の不二商会が扱うバウムクーヘンを自動化して製造する機械ですが、脱サラ的な起業や地域の特産品を盛り込んだ特産品的製品作りなどに応用が利くように、開業指導や製法指導までを併せて行っているビジネスモデルの展示でもありました。会場入場者の3分の1が海外特にアジア系の人間で、彼らの所得の向上とライフスタイルの変化に対応した食生活の向上、あるいは地元資本を使い地元産品を使った製品化と輸出を睨んでの機械の導入を感じられる雰囲気でした。日本の機械産業は自動車と電子だと限定的に考えがちですが、まだまだ量的に飛躍の余地のある、かつ、システム化やIoTの応用等高度な発展が可能な分野で、農産品の輸出と併せてもっと旗を振るべきだと思いました。
- 2016.5.23
日本開発工学会第5回技術ベンチャー叢成ワークショップを開催。
― 第5回のワークショップは、テクノロジーシードインキュベーション(TSI)?代表取締役の徃西 裕之 氏から「技術系ベンチャーの起業と再生について―VC経験をもとに大学発ベンチャーなど技術系ベンチャーの起業や再生の支援を実践してきた立場から、成功と失敗事例を踏まえ、ベンチャーに必要な要素を考える―」と題して話をして貰いました。91年に日本アセアン投資(JAIC現在の日本アジア投資)に入社後、01年9月に大学発ヴェンチャーを対象とした技術シードファンドの創設を大手と行い、これをきっかけとして大学等のシーズを事業化するべくVery Early Stageに創業資金を投入し実用化に繋げる今のTSIを立ち上げたとのことです。初期に資金を投入する事業者はなく、また、各地の支援機関も地元指向が強い中で、JAIC当時に知り合った京大工学部の機械系OB会(京機会)のメンバーの賛同を得て02年4月にTSIを設立、株主47名のうち40名が当時の産業界や大学に居た京機会メンバー等で個人株主が多いというユニークな組織になっています。設立当初に手掛けたNEDO出資のイオン工学研究所の買収は、倒産まで行きかけた研究所を紆余曲折を経て売上4.44億円経常利益94百万の?イオンテクノセンターとして再生させた代表事例ですが、大学等のシーズを事業化するべくVery Early Stageに創業資金を投入する他の多くの事例では、第二ラウンド等の段階まで成長させたところで他のVCに売却を試みても我が国ではイグジットにならず資金回収が行われないとの問題提起がありました。Very Early Stageを扱うVCは極めて少数ですが、当初投下の資金回収ができず事業基盤が拡大が行われないため、結局大学発ヴェンチャーは公的な委託・補助資金を当てにするものの後が続かない構造的な問題を浮かび上がらせてくれました。
- 2016.5.17
JST電気通信大学新技術説明会に参加。
― 基盤理工学専攻岡田准教授 から、高度好塩菌の細胞膜(紫膜)から取った人間の視物質に近似する光合成タンパク質を透明電極にパターニングすることで、視覚系ニューロンが光刺激に反応する「受容野」を模倣してアナログ画像処理を行う空間フィルター素子「視覚ハードウェア」の説明がありました。機械知能システム学専攻岡田教授から、歩行中の姿勢や力・パワー発揮の動きに関するデータを分析して歩行動作の加齢度を評価し、歩行動作をリアルタイムにフィードバックして動作学習も可能とする評価・学習システムの説明がありました。 機械知能システム学専攻森重准教授から、力覚(主に物体と接触した際に人間が感じる力感覚)をVR技術の利用により加工者が体感しながら旋削から5軸制御加工等幅広いレベルの機械加工を迅速に実現させる工作機械操作用可視化インターフェースの開発の説明がありました。機械知能システム学専攻榎木助教から、次世代型冷凍空調用熱交換器等の内径1mm程度の微細流路内の沸騰、凝縮等の相変化を伴う流れを高速度カメラで可視化するとともに熱伝達メカニズムを示す予測式の開発の説明がありました。機械知能システム学専攻千葉准教授 から、制約を内在する問題定義の後にパラメトリックスタディ等が実行されている現行の設計情報学において、その出発となる「問題定義」を設計空間の構造化・可視化によって網羅的に俯瞰できるようにして制約を解放したデザインの革新を図ろうとする設計情報学構築の取組みの説明がありました。全体に電通大らしい先端で実学的な内容であったと思いますが、教授、准教授、助教に関係なく若手が意欲的に先端的な分野に取り組み、発表を行っている状況に時代の変化を感じました。
- 2016.5.10
第177回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回も4社の発表でした。最初のルセット・ナイン?は二度目の発表で大塚社長からは、同社の製品の特徴となる細胞を壊さずに冷凍でき、また鮮度を保ったまま解凍できる技術「テクノエナジ」の説明と最近の導入事例の紹介がありました。社長の説明も落ち着いて勘所を押さえた説明となっていましたが、やはり、冷凍する者は生産者、解凍する者は製品消費者でその両者をどう繋げたチェーンにするかが課題である点は前回の説明と変わっていませんでした。 二番目は(有)宏大の小川氏から、M系列(疑似雑音)を用いたOCT(光干渉断層計)による生体深部2?程度の断層映像を非侵襲でかつミクロンレベルで得られる技術を使った子宮頸癌診察機器の開発の説明がありました。面白い技術でありターゲットも明確であるので、開発資金の調達に理解のあるVCに期待します。3社目はCO2システムズ?山?氏から、開発販売を開始した高濃度人工炭酸泉(炭酸ガスを1,000ppm以上含む湯)製造装置「CO2SPA」の説明と、次亜塩素酸を炭酸水で希釈して安全に除菌効果の高い「弱酸性除菌水」を製造する装置の開発の紹介がありました。炭酸源を別途購入する二酸化炭素ボンベに依存する点がしっくり行かず、産業活動・日常活動から生じる二酸化炭素を有効利用できれば真にイノヴェーティヴな技術となるであろうと感じました。最後に?シークの征矢氏から、工業デザイナー出身で受託開発等を行う際に使うCATIAやSlidoWorks等の三次元ソフト、三次元プリンターのソフトと機器を、クリエーター、起業者、中小企業の技術スタッフ等が利用し研修を受けることができるシークラボラトリーの展開を行う事業の紹介がありました。折角のアイデアであるので、ユーザとのコミュニケーションの方法や実加工、実金型製作等を行う事業者との連携等を進めて行く手順について少し話をしました。
- 2016.4.25
慶應義塾発ベンチャー成功の法則第1回セミナー「鶴岡流イノベーションの起こし方を学ぶ」に参加。
― 久しぶりの慶応関係の集まりであり、またタスク・ヨダの活動を始めたころに参加していたKIEPが関わる慶応湘南藤沢キャンパス(SFC)を拠点とする慶応SFC未来イノベーション&アントレプレナーシップ研究コンソーシアムへの数年ぶりの参加でした。山形県鶴岡市には慶應義塾先端生命科学研究所がありますが、その富田所長や当日プレゼンを行ったバイオ技術ヴェンチャーは元々SFCに関係しており、SFCの教育風土、鶴岡での自治体と大学との連携、オープンイノヴェーション等について興味ある話が聞けました。富田氏自身が創業したメタボローム解析事業で上場したHMT(ヒューマンメタボロームテクノロジー)社、人工クモ糸の産業応用化に取り組むSpiber、腸内細菌叢のバランス状態を把握するメタジェン社、iPS細胞由来の細胞に繊維芽細胞を混ぜて臓器組織を創り出すメトセラ社の紹介と活動状況から、確かに鶴岡での独特なヴェンチャー育成の環境を感じ取りましたが、時間の関係で、例えばそのような環境は慶応全般にあるのか、鶴岡だけが特異なのか、膨大な開発資金の手当てはどうしているのか、FINEに関係するVCだけで十分なのか、FINE参加の大企業との協業は十分なのか、オープンイノヴェーションはワークしているのか、更に突っ込んで聞きたいところでした。我が国のヴェンチャーの叢出と成長にとって、鶴岡での富田氏等の活動が飛び抜けて優れているのか、鶴岡・SFCにエコシステム的なものが生まれつつあるのか、非常に関心のあるところです。
- 2016.4.12
第176回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は4社の発表でした。ファーマバイオ?の草野氏からは、2014年秋の薬事法改正に伴い条件付早期承認制度が開始し、海外から日本への細胞治療医薬品製造の依頼が殺到している状況ではあるが、同社は、再生医療安全確保法による自由診療や臨床研究ではなく、改正薬事法(薬機法)に則り正式承認を目指す製品を開発しようとする企業を対象として、 受託開発製造を行い、更に治療機関と開発企業との橋渡し、申請のサポート等のコンサルも行っていく事業の説明がありました。川崎にあるライフイノベーションセンターに入居の上で、施設を拡大して行くための資金確保が主たる目的での説明でした。2社目はTrim?の長谷川氏から、街中の授乳室・おむつ交換台の設置情報を投稿型無料アプリで提供している「ベビ★マ」の説明と、子育て世帯のおでかけ必須アプリ「Baby maps」として広告やデータマイニングと解析情報の提供等の企業向け展開を図る事業の説明がありました。3社目の?インターメディア研究所の吉田氏から、電通大発の静電容量コード技術を用いた電子スタンプ「G-Stamp」の説明がありました。話が拡散するとともにデモも不具合が多く、本当に説明したいことが何であったのか分からないままの印象でした。4番目の?CBMIホールディングスの小野氏の説明も、衛星画像を利用しての位置情報のみならず画像解析等の情報を行うとのことですが、利用分野が広範過ぎ、かつ実例が乏しいために具体性を感じられませんでした。
- 2016.4.7
IIP知財塾第9期成果報告会に参加。
― IIP(知的財産研究所、今回知的財産教育協会と合併し知的財産研究教育財団知的財産研究所となったとのこと。)の弁理士、企業知財部担当者等の若手が行ってきた特許法等の課題と解決についての報告会でした。久しぶりの参加でしたが、課題が出尽くした感もあり、冒認・共同出願違反対策としてのあるべき特許法第74条、インターネットを利用したサービスによる特許侵害への対処策、発明思想説を踏まえ多項制における先使用権者の保護の在り方について、の発表でした。最初の課題については、瑕疵を内在した出願が確定してから公平を念頭に処理をしていくべきで、出願時点から積極的に調整をしていくと却って権利の安定が損われ手が付けられなくなってしまうので、現行法でよいのではないかと考えます。2つ目は、インターネットの世界の基本は情報の共有・自由の原則で、この世界で自己の開発したシステムを動かし情報を遣り取りさせようとしていくので、自己責任で完全にセキュリティを掛けて閉鎖性を持たせたシステムと情報でなければ、システムやソフトの利用や情報を、ただ乗りと言って権利保護に走るとパテントトロールを助長しイノヴェーションを損なってしまうのではないかと判断しました。最後、先使用権者の保護は発明思想説に立つことが最高裁の判決で確定しており、当時は単項制であったのでそれで良かったが、多項制になれば出願者がクレームから外したりして先使用権者に不利させることがあるので法的手当てが必要だとの意見でしたが、発明思想の同一性の範囲で判断するのであれば、単項か多項かで違ってくるべきではなく、理解できない内容でした。何れも論理としてどうするか、法に穴があるか、との議論で、論理の整合性追求の点では面白いですが、常識・大局観を持って議論するべきでもあると考えます。
- 2016.3.17
TEPランチセミナーに講師として参加。
― ヴェンチャーの支援機関であるTEP(一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ)のサポート会員が順次、活動の拠点である柏の葉キャンパスのKOILにおいて入居ヴェンチャー等に簡単な講演をすることとなっており、会員の一人として「ヴェンチャー経営と「お山の大将」」とのタイトルで話しをしました。他の会員の講演はHow to do somethingですが、What to do with crucial top management mind を話すつもりで準備をしました。ヴェンチャー企業のトップは、起業・創業者ですから意志が強いことは必要ですが、どうしても唯我独尊になりがちでその危険に陥ることなく、客観的に自らも事業内容も心がけて見ていくようにしないといけない、創業の仲間とはコミュニケーションに傾注してベクトルを合わせなければならないというメッセージを伝えた積りです。ただし、こういう耳に痛い話は聞きたくもないとのことで、本当に創業後数年経過して迷っているトップ以外はやはり理解できないものだろうと終了後改めて感じました。
- 2016.3.11
開発工学会第15回ビジネス・イノベーション研究会に参加。
― 久しぶりの参加でした。最初に洗足学園音楽大学のIT統括部の野口氏から、氏が独学で仮想化・クラウド化等の技術の構造変化を学習して構築した仮想基盤の上に諸システムを創り上げた経緯と苦労を紹介し、従来のSIerやヴェンダーから、ユーザに構築のイニシアティヴが移りうる可能性についてプレゼンが有りました。マルティ・コアのサーバが増えユーザが必要とする以上の過剰能力をユーザが抱える結果初期コストとメンテ費用が増加していく問題をユーザ側の技術者が仮想化基盤を構築することで解決できる可能性はあるが、同時にユーザ側の技術者に従来以上の高度の能力知見が求められる現状を説明していました。次に同大特任助教の佐藤氏から、ヤフー方式からグーグル方式へ、更にフェーズブック方式へと情報発信と入手の方法が変遷してきた中で、若い世代が手ごろなSNSにおける情報を全情報の代表として受動的に入手することにより、情報のフラグメント化と矮小化が生じていることを説明していました。主体的な意思による検索と得られる情報の評価ではなく、「仲間内」で最新に届けられる情報にのみ価値を求めていく行動が定着する帰結には空恐ろしいモノを感じます。
- 2016.3.9
SECURITY SHOW 2016に参加。
― NIKKEI MESSE 街づくり・店づくり総合展の一画の決済の安全、街・モールの安全、店舗の安全等々のセキュリティに係る展示会ですが、知合いが日本代表を務めている台湾企業のCastles Technology社のブースに行ってきました。クレジットカードのセキュリティ技術は世界大手2社のヴィザとマスターカードで決められていくのが実態ですが、今後の流れは、アップルやグーグルが提供するスマフォとカード端末機を組み合わせ、暗号にトークンを使う技術に変わっていくとのことで、小売店・流通店などの零細な事業者の安全管理モラルに依存するのでなく、データは総てクラウド上で一括管理し、情報の遣り取りを刻々変化するトークンの発行によって行おうとする世界標準の動きに合わせた端末機を開発しているのが同社とのことでした。展示会全体の印象としては、流通関係の展示会が少ないせいか、雨天にも関わらず多くの人で、しかもアジア人の多いことに驚きました。アジア各国においても流通の世界が直ぐに変わっていくことを予感した次第です。
- 2016.3.8
第175回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は3社の発表でした。最初の?アスタリスクの鈴木氏からは、iPhone/iPod Touch装着型のバーコード・RFIDリーダーの説明がありました。従来の業務用端末に対して、iPhone/iPod Touchの機能を基本に外部パッケージ的機器を装着一体にして利用するため、同社の独自アプリだけでなく多様なアプリケーションを利用でき世界中でそのまま使え、価格的にも安く、コンパクトで簡便に使える等のメリットを感じました。アップルの世界標準的プラットフォームをうまく使いながら、我が国でも発展してきたリーダー技術を一体化させた面白い製品で、自動車大手、化粧品、大手小売店舗、病院、物流等で導入されています。米国にも子会社を作り、グーグルのアンドロイド対応を計画している等事業としては完成しており、更には社長としてのプレゼン術にも長けているところから、成長していく会社だと思いました。2社目は、環境ソリューションズの小谷氏から、活性酸素反応(Super Radical Reactor)を使った天然・合成の有機廃棄物の溶解処理装置と事業化の説明がありました。本技術の効率性(処理量、処理時間等)の説明が無かったため、技術の優位性等の判断はできませんでした。溢れ返って一部の焼却処分以外に放置されている未利用バイオマスの利用技術の確立の難しさを改めて感じました。3社目は、?WiFiシェアの荻田氏から、スマフォ等のヘビーユーザが受ける契約枠を超えた利用制限を乗り越えるWi-Fiの空き周波を共同利用(シェアリング)するサービスと、本サービスを導入した事業者が設置したWi-Fiスポットでの顧客の購買・行動分析を行いプッシュでお買い得情報を提供するマーケティング事業の説明がありました。いいか悪いかは別としてヘビーユーザの若者のニーズを捉えるとともに、目下流行のシェアリングをキーワードとし、課金も可能とする良く考えた仕組みであると思います。
- 2016.3.3
日本開発工学会第4回技術ベンチャー叢成ワークショップを開催。
― 第4 回のワークショップは、早稲田大学の清水 康氏に「大学発ベンチャーの現実とその課題―早稲田大学TLO、インキュベーション推進室、起業家養成講座、3つの異なる現場を掛け持ちする立場から、大学発ベンチャーの現状とその未来を考える―」とのタイトルで講演をお願いしました。清水氏は、サブタイトルにある3つのワラジを履きつつ起業指向の学生、若手ベンチャーとの接点を持ち、自身も別途コンサル活動を行う多面な活動をしています。インキュベーションセンターにはソフト開発の身軽なヴェンチャーが多く、本格的な大学の研究開発の成果をコアとする技術指向ヴェンチャーは少なく資金問題からも当初の計画通り進んでいない企業が多いとのことですが、残念なことに、かって、大学が関連したヴェンチャーと自治体とのトラブルが生じたことから、大学の公的な立場としては早稲田大学発ヴェンチャーのような呼び方を避け、技術系教官がヴェンチャーの社長に就任することにも消極的になっているとの現状の様です。学生の起業感について、「早稲田を世界的な起業家を輩出する大学にするために必要なことは?」の問題意識で行った学生活動の紹介がありました。「全学生を対象としオープンな施設 Waseda Startup Labを設立。プログラミングの必修化とその学習支援。授業はオンデマンド。WSLで何時でも質問/相談可能。交流会を開催。」という現実的実践的な内容で、Waseda Vision 150 Student Competition審査員特別賞を受賞したとのことでした。大学発ヴェンチャーの支援とVCとの関係については、早稲田関連とされるウェルインベストメントも大学発の技術には特化しておらず、大学発のヴェンチャー企業創出を目的に国立4大学(東京、京都、大阪、東北)が1000億円の交付金を原資としてVCを設立した動きに関し、民間との役割分担を意識してアーリーステージの案件に出資する、税金原資を毀損せず慎重に運用し低リスク案件に出資するとの原則の両立に懸念を示し、ウェルインベストメントのように当初の技術指向や高リスク基礎分野指向からの変遷を辿る可能性について言及していました。早稲田大学という私大の雄にして色々問題を抱え、現場としても苦労している感が窺えました。大学発ヴェンチャーを大きくしていく我が国の課題解決も道遠しと言う思いでした。