- 2017.12.21
知的財産研究所平成29年度招へい研究者ViolaPrifti女史の成果報告会に参加。
― 「特許性から除外されるべきヒトES細胞の種類とは―日欧の特許法における「公序良俗」条項の分析」とのタイトルで、アルバニア出身でマックスプランク研究所博士研究員等の経歴を有する同女史の講演を聞きました。日欧の特許法は、それぞれ公序良俗に違反する発明は特許を付与しない規定を置いているが、ヒト胚性幹細胞(ヒトES細胞)については、ヒト遺伝子が改変され改変された遺伝子が数世代にわたって受け継がれていくこと、ヒトのクローンが生じる可能性があること等から日欧において特許対象からは外されているものの、微妙に範囲については差異がある。他方、米国では、これを対象とする運用がされている。以上の様な差異を踏まえて、主に日欧の特許当局の考え方を紹介しつつ、米も含めた制度調和の必要性の論点を説明していました。倫理・人権の世界と、特許法が適用されるビジネス世界とが交差する領域を扱った意欲的な研究であって、女史の挑戦には敬服しましたが、簡単には答えを見い出せない問題であり、結論としてはやや生煮えと言うもの、よく2時間重たい課題を説明してくれていました。欲を言えば、米国特許法を含めて正面から3法の違いを説明して欲しかったと思います。なお、人口多能性幹細胞(iPS)については特許が付与されていますが、これは、ヒトES細胞の裏返しで、ヒト遺伝子が改変され改変された遺伝子が数世代にわたって受け継がれていくこと、ヒトのクローンが生じる可能性があること等が認められないからと理解しました。
- 2017.12.12
第193回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 最初の発表は、CO2システムズ(株)の山埼氏から、管の中の仕切り板やスリットが産み出す水流が管に注入される液体(水)と気体(CO2)の混合体を作ることにより家庭で炭酸泉浴ができる人工炭酸泉生成装置と、同原理で次亜塩素酸水とCO2を混合させて除菌効果を高めた弱酸性次亜塩素酸除菌水生成装置の説明がありました。ややマニアックな製品でCO2ボンベと次亜塩素酸パックを別途手当しないといけないこともあり、相当大規模な業務用施設での利用となると思われました。2番目は(株)コレッドの中里氏から訪日国人向けの翻訳と観光情報を提供するIoT機器の開発プロジェクトの説明がありました。人間の行動分析が専門とのことでしたが、翻訳とGPSを使った情報提供では他に類例が多数あり製品化の差別化が難しいのではないかと感じました。3番目は(株)プロメーテの渡部氏から、圧力センサー等を利用したと思われる専用のタブレット上にアンケート様式的な紙を置き専用の筆で手書きすることで入力し、かつその文字を解析し構造データとして整理蓄積していくクラウドによるIT支援サービスの説明がありました。コールセンターのオペレーターが受け応えしながら書いたメモが電子情報に転換されていく利用例に最も興味を感じました。対象者が限定された空間でのアンケートや半強制の所要事項の記入(病院の初診時、入管の健康チェック等)にも向いていると思いますが、ようやく試作品が完成したところで、料金体系等はこれからとのことでした。面白い着目点で、シュンペーター的新組合せのイノベーションだと思いますが、公的な利用になるほど精度の壁も出てくると想像します。最後に最近の説明の傾向として、ただ既存のパンフを持ち込んで説明する、あるいはプレゼン資料があっても配布されない事例が多く、資料を作ることで事業計画が明確になり、第三者にも紹介しやすくなることに気が付けていないことが残念です。
- 2017.12.4
横浜企業経営支援財団 経営者講演会に参加。
― ベリフィケーションテクノロジー(株)社長 竹内 秀人氏による「資金なし・人材無し・技術無しの会社がIPOを目指すまで〜ビジネスモデルよりも人材が全てと気づいた経営者の悪戦苦闘の14年間の今後の展望〜」とのタイトルの講演で、半導体設計の後工程である、設計の不具合・欠陥を探査し修正していく“ベリフィケーション”を専業として、ITバブル後の2002年に独立した同社長の14年間の文字通りの悪戦苦闘を語っておられました。同氏は事務職・営業畑出身であり、技術系の同僚とスピンオフして、組織人時代に出会ったベリフィケーションの重要性に着目して起業に至ったとのことですが、当初は他の日銭稼ぎをしているうちに本業の注文が飛び込み始め、本事業が離陸しかけた時に技術系の共同創業者と袂を分かち技術系従業員を大量に採用したものの求心力の問題が生じたこと、米国市場を狙っていたにもかかわらず給与水準にこだわったためにシリコンヴァレーに通用する人材を雇わず英語の問題で部下に裏切られたこと、技術系も事務系もスキル・学歴ではなく人柄で意思疎通が図れるかどうかが第一であること、問題が見えているときは問題ではなく、問題を見ないで浮かれているときが経営の危機であること、やりたいことやるべきことのためにはコストを掛けても(人材も含めて)やらないといけないこと、部下は社長の顔を見ていること等々、経営者にとって得難い教訓に満ちた話であったと思います。会社は社長の器以上には大きくならない、社長がまず成長しないといけない、との教訓通りの話でした。ただ100人近い組織になったときにどのように組織を作り(4部体制とのことでしたが)、権限を委譲しているのか、そこを詳しく聞ければ更に良かったと思います。
- 2017.11.28
YNU研究イノベーション・シンポジウム2017“企業のモノ”をサービスに換えるに参加。
― 横浜国立大学が、次世代の超スマート社会とされるSociety5.0 の実現を“企業のモノ”をサービスに換えることでこれに参画し、そのための大学外との連携の拠点として、情報・物理セキュリティ、人口知能、ロボティクス・メカトロニクス、文理連携社会価値実現の4つの拠点を選び、共同研究等を企業に呼び掛けるシンポジウムでした。学内における研究単位の縦割りを超えて複数の教授が集まる研究拠点を設け、更に学外の企業に積極的に共同研究等を呼び掛けて、企業の事業の高度化・付加価値化を図るとともに、それに大学が参加することで学内のイノベーションへの取組みを強化しようという極めて目標の明確な集まりでした。当初は選択した4拠点の成果発表かと思いましたが、従来の生産活動の延長では乗り越えられない壁にぶつかっている企業に対しその解決が大学参加で場合によっては解決できるかもしれないことを訴える営業活動的な場だと感じた次第です。現実には拠点を跨る更に複合的な課題に学内が対応できるのか、共同研究から生まれる知財の参加企業独占と公的資金から生まれる制約をどう解決するか、諸手続きをどう簡素化するか等パブリック部門が直面する課題を、文科省等とどのように交渉していくのか、深刻な議論もされました。非常に実践的な場で参考になりました。
- 2017.11.22
慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスOpen Research Forum2017に参加。
― 場所を六本木のミッドタウンに変えてのフォーラムでした。久しぶりに覗いてみましたが、慶応の学生の元気良さ、熱心さに改めて感心しました。各研究室での学生グループの成果発表活動を公開し企業・同窓生との交流を進める目的だと思いますが、村井純教授等の指導もあって100近いブースで広範囲な社会的ニーズを上手く取り上げ、整理していたと思いました。セミナーとしては、「街をIoTで包むと出てくる情報の力と実験」を少し覗きました。地元藤沢市のごみの収集のカメラによる可視化、現場と事務所の一体化、蓄積された情報分析によるコスト削減サービス向上等自治体と大学との協力によるITの利活用の面白い取り組みの話を聞きました。やはり湘南藤沢キャンパスの実践的な取り組みの力強さに変化が無いことを改めて感じた次第です。
- 2017.11.21
ものづくりパートナーフォーラム2017に参加。
― 日経ものづくり主催の展示会とセミナーで、金沢工業大学革新複合材料研究開発センター影山裕史氏の「自動車とCNF(セルロースナノファイバー)―期待と課題―」と題する講演を聞きました。トヨタ出身で材料技術開発に長く関わった人のようで簡潔に実際的な内容の話でした。複合材料としては炭素繊維によるCFRPが実用化され構造材として使われている一方で高価であり石油由来であるため、木材由来のCNFを利用した非構造材・等方性材料としての自動車内部パネルや力の比較的かからないピラー等での利用の可能性に言及していました。圧縮成型技術や塗料・接着剤との混合技術の開発が課題であるとのことでした。CNFの構造材としての利用に疑問を持っていましたが、CNFに全て置き換わるのではなく分担・補完していくことで利用が可能になるとの説明に納得がいきました。個別企業の展示では、砂型鋳造に代る石膏鋳造法による試作で時間の短縮等を図っている(有)モールドモデル、異材料の接合を可能にするAKI-Lockを開発したポリプラスチックス(株)、商品の表面を如何に光らせるかを目標に材料・加工・成形等を組合せ開発していく(株)アークの3社に眼が行きました。いずれも実績を既に有する企業のようですが、(有)モールドモデルは自動車の設計図の樹脂模型製作をコアとして3次元CADを使って精度を上げる石膏鋳造法を実現したとのことでした。ポリプラスチックス(株)はエンジニアリングプラスチック製造・各種樹脂金型・加工の日米の中堅規模の合弁会社で先端技術の開発にも取り組んでいるようでした。(株)アークは戦後創業の木製品の製造を主とする荒木製作所から始まり80年代早期に欧米東南アジアと海外展開をしている中堅のデザインから金型までを手掛ける企業とのことでした。面白い会社にも出会え有意義な場でした。
- 2017.11.15
知的財産研究所平成29年度招へい研究者Ravindra Chingale氏の成果報告会に参加。
― 「コンピュータソフトウェアの保護とそれによる日本とインドのソフトウェア産業に対する影響」とのタイトルによる発表でしたので、興味を覚え、本当に久しぶりに参加をしました。同氏の滞在はわずか2か月半程度の短期間で、我が国における企業インタビュー等が不十分で、それをベースに一定のレポートを纏めること自体無理があり気の毒な感じがしましたが、インドにおけるコンピュータソフトウェアの特許法と著作権の定義の不整合性等から生じるインドの中堅・中小IT企業の遭遇している問題について重点的に話をしていました。残念ながら著作権による紛争とその解決(裁判)の例については触れておらず著作権による保護が十分かどうか不明で、特許法の審査期間、審査・運用の透明性の問題に焦点を当てて、我が国における審査基準やガイドラインのようなプラクティスの確立が保護に必要であると結論付けているように思えました。現実には米国子会社の特許出願が殆どで、インド企業の出願が無いことを考えると、基準・ガイドラインの整備に併せての独自の産業の育成・支援策が必要であるのだろうと感じました。
- 2017.11.14
第192回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 今回は3社の発表で、最初はPCからスマフォまで各種IT機器データの消去装置の開発・製造・販売・レンタルまで一括でサービスを提供しているリ・バース(株)生田篤識氏から事業の説明がありました。2005年創業で日本コンピュータダイナミクス(株)の下条氏が取締役もしているので、この分野ではある意味老舗であり既に一定の事業規模を展開しているとのことでした。2番目は、アイグローバル(株)からカーボンファイバーを造形物に組み込める3DプリンターMarkforged社製品の説明がありました。価格も安く構造材の成形ができる特色を有するとのことでした。3番目は、(株)教育ネットの大笹いづみ氏から、小中学校の教師・保護者等向けに情報モラル教育(インターネットを安全に使うための教育)、基礎的実態調査等の事業内容の説明がありました。1社目は会社として確立していると見られ2社目はどうも米国のiGlobal社の日本子会社のようで、本ビジネス発表会本来の起業直後の資金調達や取引先紹介とは異なるニーズで発表している感じがしました。ベンチャー企業の資金調達問題が解決している訳でもないことを考えると何か外部環境に変化が生じている気がしています。
- 2017.10.27
第7回おおた研究・開発フェアに参加。
― 大田区産業振興協会主催の展示会で、この分野での展示会は初めての参加でした。最初に大分大学の大気圧環境で窒素をプラズマ化し金属表面に窒化化合物を形成させて素材を強化させる技術の展示を見ました。大分からの出展に驚きましたが同協会からの勧誘が切っ掛けだそうです。次に放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering)法による焼結・接合・表面改質等を行う装置の開発を行った(株)シンターランドと販売元の(株)エヌジェーエスの展示に眼が行きました。粉体の焼結加工は知っていましたがそれに止まらない多様な加工処理ができる技術とのことでした。この他にも多くの大学やベンチャーが展示しており、製造業に近い分野の技術が並ぶいかにも大田に相応しい展示会でした。最後に。東京大学農学生命科学研究科教授の磯貝 明氏の「セルロースナノファイバーの特性と応用展開」と題する講演を聞きました。TEMPO (2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxylの略称)触媒酸化と呼ばれる化学反応と軽微な機械処理を組み合わせてセルロースをミクロフィブリル単位に解く技術とその応用としての機能性材料の可能性を解説していました。同素材が構造材として使えるとの報道は誤解を生んでいること(セルロース分子をそのまま引っ張り試験をして示された強度は分子単位のものであり構造材としての強度ではない。)、20年かけてようやくおむつ(日本製紙)やボールペンインク溶剤の利用が見えてきたこと、大学の基礎研究を担う役割が独法化により崩壊しつつあること、等を強調していました。
- 2017.10.24
イノベーションリーダーズサミット(ILS 2017)に参加。
― 大手企業とベンチャーとのマッチング等を目的としたイベントで、旧知の(株)京都マイクロシステムズの加藤氏が出展しているので、同氏と久闊を叙しに参加しました。元々は電通大の技術である半田等の粘着性の高いゲルを一定量噴出させるプリンテッドエレクトロニクスの製品化を行っていましたが、同氏の出身地の京都に戻りKRPを拠点に、同技術を使って開発した、高齢者向けに緑内障点眼液を自動的に容易に注せる圧電式点眼デバイスの展示をしていました。愛犬等への応用もありニッチであるものの普及は早い感じがしました。併せて、水だけで不着汚染物質を除去できる親水性無機塗料を開発した(株)五合、店内・倉庫内の人の動きを感じ取り分析するシステムを開発したスプリームシステム(株)の展示も見ました。特に前者については、ケイ素系の物資を高温で焼き付けることで耐久的に抗菌・抗カビ・抗有毒物質性能を建築・建設用の内装材、厨房機器、家電用品をに付与するもので、特に産業用・業務用の素材に対して有効な手法だと思いました。後者は多くある動線分析の一つでレーザーセンサーを複数設置して一般の顧客等の動きを把握する店舗用等のシステムでした。工場・倉庫等の一時的な動線分析のためには工事が必要となるようで向かないのではないかと想像します。本イベントに関して、何故虎ノ門ヒルズのような本来オフィスビルの場所を使い大仕掛けで派手な手法を取らないと大手企業とベンチャーとのマッチングができないのか、何時も疑問に思うことを今回も感じました。一過性の行事にせずに橋渡しが継続する仕組みは別にあるのではないかと考えます。
- 2017.10.10
第191回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 1社目は、(株)ADSムラカミの村上康裕氏から油圧、空圧、電気の弱点を克服し水道圧を利用した新駆動技術「水圧シリンダ」を使った介護等向け入浴装置及び水圧シリンダ技術を利用した各種水圧装置開発と海外展開の計画の説明がありました。駆動スピード次第で水道水を常時利用する工場等における応用があると思いました。2社目は、西風技研(株)の西浦信一氏から、IoTに使われる無数のセンサーの稼働と情報の送信に必要な電力を、風力におもりの上昇下降をさせて貯めた位置エネルギーによる発電で供給する“パルジファル”の説明がありました。外部自然環境に置かれたセンサー等の電源として意味があると思いますが、太陽パネルと蓄電池の組合せに対抗できるシンプルな仕組みが必要だと思います。3社目は、(株)ebookcloudの稲垣健二氏からスマフォ対応のプッシュ型キャンペーン販促メール等送信のアプリケーションソフトの説明がありました。実績のある既存PCベースのEC用システム開発から離れ、スモールビジネスを対象に、クラウドで、誰でも簡単に作成でき、アップル・グーグルのアプリ登録も代行し毎月課金するというビジネスモデルの転換でした。最後にメイクラフト(株)の山崎重利氏から、地ビール等の業者が自社購入して自社流通・自社回収させている一樽1万円〜1万5千円の金属樽に置き換えるワンウェイ方式(使い捨て)の生ビール容器「MAYKEG」の説明と、約300社あるクラフトビール会社をカバーし飲食店とを繋ぐマッチングサイト構築計画の説明がありました。非常に面白く、地域活性化と都市・地方の連携にも繋がるイノベーションの一例で神奈川県の大方の支援機関が参加して後押しをしています。ただ、コスト面・衛生面での問題は解消されますが、産廃ゴミの対応の課題は残る気がします。別の興味としては樽からビールを取り出すディスペンスヘッドにはキリン型とアサヒ・サッポロ等型があり、地ビール用の既存金属樽は後者を使っており、キリンは単独路線だとのことでした。プラットフォームの意味も考えさせる事業内容でした。
- 2017.9.26
NEDOピッチ「ライフサイエンス・ヘルスケア」に参加。
― 形式上は、NEDOが事務局をしているオープンイノベーション協議会が主宰のピッチ会で、腸内細菌叢を解析し生活改善等を提案するヘルスケア事業を行う(株)サイキンソー、実験者(職人)の様々な手技等従来自動化困難で複雑な作業を精度よく繰り返し行う7軸ロボット「LabDroidまほろ」のロボティック・バイオロジー・インスティテュート(株)、マイクロ流路チップ・セルソーターによる極レアな血中の循環癌細胞を検出・分離する(株)オンチップ・バイオテクノロジーズ、認知行動療法による不眠症治療のモバイルソフトウェアを提供するサスメド(株)、無タンパク質培養で均一性が高いヒトの成熟心筋細胞に近いiPS 細胞由来心筋細胞を安く一定量提供する(株)マイオリッジの5社からプレゼンがありました。医者や創薬関係研究者、あるいは医薬企業は世界が狭いので、改めてこのピッチ会でプレゼンをしなくても知れ渡っているのではないか、既にある一手に実績を上げている企業ではないか等の疑問を感じながら聞いていました。医薬企業からの質問もありこれら疑問は間違いかとも思いましたが疑問は残りました。ある支援機関の知り合いが参加しており疑問をぶつけてみましたら、同感で狭い社会の中特定の教官等が関わるとそれ以外の教官等は距離を置いてみるように感じるとの意見でした。このような壁を超えて普及させていくには中立的な機関による資金の投入とコストの低下が不可欠かと考えました。
- 2017.9.15
カナダ大使館主催対カナダ投資等セミナーに参加。
― かつて在加日本大使館に勤務したこともあり、カナダの現状に興味を持って、参加しました。残念ながら参加者は少なくどのような広報を行っているか疑問に思いながら聞いていました。最初に、幾つかの企業を業創業し現在はAcceleratorの活動を行っているウェイブフロント社のグラハト氏からカナダのIoT分野での政府の取組み、幾つかの産業セクターの事例の説明がありました。時間成約の下で太平洋を越えた広大なカナダでの限られた事例の紹介で、全体像が見えませんでしたが、オイルサンドの製造効率化のために多様な技術をアグリゲートするコンソーシアムの説明が印象に残りました。次に日商エレクトロニクス(株)社長の岡村氏から、カナダ勤務におけるカナダの印象、同社のカナダのベンチャー企業等との連携事例の説明がありました。在加日本大使館勤務とほぼ同じ時期に、スズキ自動車とGMとの合弁であるCAMIの立上げ・鉄鋼製品の納入に関わられたとのことで、日加との自動車部品関税引下げ交渉・NAFTA交渉を懐かしく思い出しました。カナダのベンチャーの紹介では、広告・会社ロゴ等をガラス壁に投影する技術は我が国でも利用可能ではないかと思いました。
- 2017.9.12
第190回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 久しぶりの発表会出席です。今回は4社で、最初はアタカプランニング(株)の古河正己氏から物販・飲食の小規模事業者を対象に店舗・看板・ロゴ等の改善提案を行い、売上向上を実現してきた同社の特色の説明がありました。同社が配布した「黒字化計画」実績集にはベンチャー企業の経営改善の点からもなるほどと思う点が幾つかあり参考になりました。2社目は(株)ジェイアークの青木英憲氏から、介護事業に付加価値を付けるために開発した「包括自立支援プログラム」(運動器ケア・口腔ケア・栄養ケア・排泄ケア・リフレケアを総合的に行うプログラム)をITを使い標準プラットフォーム化し、他の介護事業者に有償提供・チェーン展開する事業の説明がありました。3社目の(株)アクティブアンドカンパニーの大野順也氏から、企業の規模拡大に関わらず1,2名の小人数で属人的に行っている採用・人事・厚生等の管理を一元的にデータ管理し、異動・プロジェクト構築等にスムーズに繋げるクラウド型人事管理システムの説明がありました。人事記録等のデータ化のアウトソースを受け“日銭稼ぎ”をしつつ同システムの普及を図ろうとするビジネスモデルで地に着いた展開のように思いました。100人程度の企業の壁を考える際の盲点を指摘された感じでした。最後に(株)パルソラの三宅 克氏からスマートフォンに特化し、画と文字の簡単な小説(コミック・ノヴェル)や漫画化古典落語を掲載できる独自フォーマットシステムの説明がありました。同氏は小学館等でハードのコミック雑誌作りに長年携わって来ており、その思入れと経験をITの世界でのサービスに繋げたいとのことでした。不特定の者の参加によって物語を展開させる狙いもあるとのことで、かっての連歌の世界の再現になれば面白いと思いました。
- 2017.9.7
「大変革時代を迎える自動車OEMとサプライヤのこれからの協業モデルセミナー」に参加。
― シーメンス社の主催のセミナーですが、久しぶりに自動車業界事情を聞ける機会となりました。セミナーの柱は、業界のディジタル化が一層進み、設計段階のCADから生産工程の管理、販売後の対顧客向け情報提供まで、一層一気通貫のシステム構築が求められる中で、CADはダッソーのCATIAが大宗を占め始めるものの、同社のNXあるいはPTC社のCreoと複数の製品が並立し、画像処理・可視化・工程管理に関しても多様な製品が供給される現状で、アッセンブラー同士の協業、単一の部品メーカーと複数アッセンブラーとの協業が進み、企業間を跨って水平かつ垂直に情報をどのように遣り取りしていくべきか、その標準化は進められているのか、情報の流れを整理する仕組みとしてどのような機能が求められているかを、製品提供者のシーメンスが解説し、利用者側が実情・課題をプレゼンするというものでした。アッセンブラーとしてはホンダ・日産・マツダが、部品メーカーとしてはデンソーとBoschがプレゼンをしていました。世界中の主要なアッセンブラーに部品を納めるデンソーのシステム対応の負担には結構なものがあること、日産がルノーの子会社となってアッセンブラー間の情報システムを他社よりも早く統一化していること、ホンダが我が道を行っていること、欧州特にドイツが標準の先導役となりIndustry4.0を打ち上げるのは米国発の多様な画像処理ソフト等が普及してくることに対する牽制であること、などを感じ取れるセミナーでした。ただ、自動車の巨大な市場で工場であり標準でも独自路線を走っているはずの中国の動向に全く触れられずに終わったのが物足りないところでした。
- 2017.8.3
JST京都工芸繊維大学新技術説明会に参加。
― 同大学の材料系の案件を集めた発表でした。「型押し成形可能なヒ素・セレンフリー赤外透過ガラス」は、従来の赤外透過ガラス材料に使われるヒ素やセレンを含まず、人体発及び大気圏通過の波長の赤外線を透過させ、型押し成形が可能で複雑な形状の部品生産が可能となる新材料とのことでした。「GaNとほぼ格子整合する新しいITO膜の形成技術」は、ミストCVD法によって作成した菱面体晶構造のITO(Indium Tin Oxide)透明電動膜がサファイアと同じ結晶構造でGaNとほぼ同じ格子定数を有することから、今後パワー半導体として期待されているGaN用のバッファ層として利用させたいというものです。ミストCVD法は非真空状態で超音波振動によりミスト状にした材料を基板に吹き付けるという手法で、本手法でデバイス基板サファイア層上にITO層を形成してGaN用バッファ層とし、デバイス中の課題の多いGaN層を極小化し効率の高いGaNデバイスを作製しようとするものです。「誘電体/磁性体からなる電磁メタマテリアルの無線応用」は、漏れ波アンテナ向けに、非相反(電磁波の速度等が進行方向の正負で異なる性質)を持つメタマテリアル(負の屈折率を持つ物質)を利用することでアンテナの小型化と効率化を図ろうとするものです。他の案件も含めて材料系の面白い技術が発表されていました。工芸繊維という名称からは想像されない幅の広い材料系の研究開発がされていることを認識しました。それぞれが良き企業提携先を見つけ、一歩でも実証に近づくことを期待しています。
- 2017.8.1
JST熊本大学新技術説明会に参加。
― 久しぶりの新技術説明会参加で、同大学から5件報告がありました。最初と2件目の「曲面に密着する圧電センサーを可能にする連続ゾルゲルスプレー法」と「超高温圧電セラミックス式センサー材料」は学内で異分野の教官がティームを組んで開発を進めているとのことで、実用化されれば応用範囲が広がる面白いものですがまだまだ実験室段階であり、早く外部企業と組んで試作・実証へと進んで欲しいと思いました。4件目の「高性能な新規アンモニア燃焼触媒とそれを用いた水素製造法」は、自然エネルギーを使って製造できる水素の運搬の課題を、発生現場でアンモニアに変換し液化輸送して利用現場で燃焼させてエネルギー化するもので、酸化アルミニウムに担持した酸化銅と銀の新規触媒を用いてアンモニアを燃焼させ水素を高効率に製造できるとするものです。非常に革新的な触媒の発見ですが、実用化には距離はあり、早く企業と組み実用化へ進めて欲しい案件です。最後の「円偏光ルミネッセンスを産み出すオール有機材料」は、当初理解できませんでしたが、光の波長をある特定の波長に変換できる材料を使いソーラーパネルで発電に使われない波長の光エネルギーを利用可能な波長に変換できれば発光効率を上げられる訳で、それを開発した材料に市販の蛍光色素を混ぜることで容易に目的の波長光を得られるというものです。以上はいずれも良き連携先企業と組むことで実用化されると考えますが、東京から離れた地域の大学の活躍が示されており、我が国の理工系大学の層の厚さを評価したいと思います。
- 2017.7.10
富士通総研/経済研セミナー「第4次産業革命を進展させるために 〜ドイツと中国の最新動向から学ぶ〜」に参加。
― 上席主任研究員マルティン・シュルツ氏からは「ドイツにおける『インダストリー4.0』とデジタル化の進展」について、主席研究員金堅敏氏からは「『中国製造2025』の進展とイノベーションの最新動向」について、ワークショップ的な講演がありました。前者の視点は、競争力の維持、人口減・高齢化の中での生産性の向上を達成するための産業構造の基本をなす製造業のイノヴェーション運動だというものでした。現在の製造業あるいは産業の新しい21世紀後半に向かっての潮流は一つはカリフォルニア発のITをベースとする新産業、もう一つは中国発の製造業等の飛躍的発展にあり、ドイツが埋もれるとの危機感からインダストリー4.0の取組みがあるというものです。産業間のインターフェースを取り除き大企業から中小企業の階層を貫く情報化とその標準化の主導権を取ろうとするものだと捉えていましたが、同氏のような見方は新鮮でした。ちょうど、7月8日号のThe Economistがドイツの黒字問題を特集しており、それに伺われるドイツの競争力と生産性向上への強固な考えに通じるもので、我が国のような総花的・右倣え的IoT・AIに絡めた皮相的な取り組みではないと考えるべきだと思います。後者については、ECやインターネット・消費者向け電子機器の成熟化に反しまだ成長段階にある製造業が飛躍的発展を遂げるべき産業政策全般を対象としたものだと位置付け、製造業における情報化の担い手として我が国の富士通や三菱電機のような企業が欠けていることの問題点を強調していました。ただ中国が今後イノヴェーションの本格的な担い手たりうるかという点については、先端分野では日本以上にシリコンヴァレーと直接繋がっているにも拘らず情報・言論・意見の自由が無い多様性に欠ける中国社会では発展は難しいと懐疑的な分析をしていました。最後に意見交換となり、ドイツから見た日本との連携の狙いは何かとの質問に対し、ドイツが中心となるヨーロッパの各種の認証システムのアジアに置ける拠点作りだという回答で、これは標準化の主導権とも結びつくものでもあり、目から鱗的な思いでした。いずれにしても富士通総研の一連のセミナーについてはそのオープンで問題提起的取り組みに感謝しています。
- 2017.6.13
第20回GPIC研究会に参加。
― 今回は九州工業大学・次世代パワーエレクトロニクス研究センター長の大村 一郎教授から「パワー半導体の動向:応用、デバイス、業界」とのタイトルで話が有りました。同氏には2012年9月のイノベーション・ジャパンの折に名刺交換をして本研究会の紹介もしたことがあり、懐かしく話を伺いました。元東芝の技術者であるとのことで、単に研究者の視点での技術開発動向だけではなく、インフィニオンとクアルコムのいわば覇権争いのような状況が起きているグローバルでの業界の動向のダイナミックな話が聞けました。インフィニオンついては先に18回の研究会で話を聞きましたが、パワー半導体のリーダーとして底辺から多様なユーザー領域の利用に繋がる技術と製品の開発を進めているのに対し、携帯通信分野でのユーザー領域から他の利用分野を含めて底辺に向かって、主に資金を活用して企業買収を進めているクアルコムの戦略を、対比させての解説でした。残念ながら本研究会は技術者・研究者が殆どで細かな細部の研究・技術の動向には熱心ですが、パワー半導体と言う我が国が優位性を有しているとする技術を経営戦略にどう繋げて行くのかという議論がされない状況であり、今回も極めて残念な思いで終わりました。
- 2017.6.9
日本開発工学会第10 回技術ベンチャー叢成ワークショップを開催。
― 過去9回の講師の問題提起を基礎に技術開発ベンチャーが叢出し成長していくための課題を整理し解決の方向性を示す提言の最終取り纏め案を、話を頂いた講師等の参加を得て、意見交換しました。技術開発ベンチャーの重要性を再確認するとともに、各方面で行われているベンチャー支援の試行錯誤の取組みに対する選択肢の提供という意味での提言とすることで、参加者のコンセンサスを得ました。ただ大きく議論となったことは、大企業がCVC創設に取り組む中で、学生ベンチャー等に多額の資金を投入する事例が急速に増えている点で、本来の技術の評価・事業の発展性の評価が適正に行われているのか、多額の資金の一時の投入は却って当の技術開発ベンチャーをスポイルするものではないのか、他のVCも含めた支援と社会的なイグジットが必要ではないのか、一種のバブル的状況であり結局真のエコシステムが定着しないままブームが終焉するのではないか、という深刻な意見交換が行われました。いずれにしても2年以上10回にわたってワークシップを開催できたことについて、開発工学会の幹部を始め、9人の講師の皆さん、関心を持って参加して貰った各方面の方々に感謝を表します。
- 2017.4.11
第186回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 1社目は、オフィスにドリンク等を置き安価に提供するミニ無人店舗を展開するOHENカンパニー(株)の佐々木氏から事業概要の説明がありました。近辺にコンビニのないオフィスというニッチな空間を狙ったビジネスだと思いますが、中小企業オフィスを対象とするのであればアスクル的な物販と組み合わせると面白いと思いました。2社目は、自分でお気に入りの場所の写真を掲載して訪問時期や印象をと地図上に表示していくMap Lifeについて(株)モバイルライフジャパンの神農氏から説明がありました。仲間内の情報共有という狙いのようでした。3社目は、製造業の生産性向上に資する情報提供を行うポータルサイトである「ものづくり.com」を運営する(株)産業革新研究所の熊坂氏から、狙いとサービスの概要の説明がありました。既存の中小企業が新商品開発に至る過程でシックスシグマやパラメーター設計等の数多くの技法を必要とするのか不明ですが、誰かに相談して経験ノウハウを活用したいとのニーズはあり相談サイトに意義はあるのかもしれません。それよりも生産現場が空洞化しつつある大手企業内部にニーズがあるような気がしました。
- 2017.3.14
第185回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 1社目は、小型の臨床検査機器であるPoint Of Care Testing Kitの開発を進めているセルスペクト(株)の岩淵氏から、採血現場でクローズドに血漿分離を行い検査結果を直ぐに出せる同社の技術の説明、結果のDB化と医療機関でのネットワーク活用、更にデータを活用した個人個別医薬の開発等の構想の説明がありました。国内での手続きも進めているとのことですが、米国シリコンヴァレーに拠点を設けてFDAの手続も先行させ、欧州展開も計画しているとのことでした。岩手に本社を置きながらグローバル化を意欲的に進めている点に感心しました。2社目は、アスリートの栄養管理を科学的に進められるサービスを提供しようとする(株)アイキューブドの桝田氏から、事業概要の説明がありました。具体的なデータの取得とDB化、それに基づくソリューションのメニュー化、監督指導者とアスリートとの繋がりの具体化等々課題はまだ多いようでした。3社目は、食事写真から摂取栄養素とカロリーを判別して情報をフィードバックする「Calかん」サービスを行う(株)ツクタ技研の榮田氏から、写真画像の精度をあげる協調学習(Man & Machine Ensemble)を使ったサービスの高度化の説明がありました。人と機械(コンピューター)の画像認識を並行して行う協調学習は初めて聞いた概念で、別途の検索もしましたが、具体的なイメージは不明です。4社目は、セキュリティソフトを販売する(株)コムシーズの吉光氏から、同社の権限チェック方式の特徴について説明がありました。
- 2017.2.24
富士通総研中国通セミナー「米中経済の新たな展開―日本経済への影響―」に参加。
― 主席研究員柯 隆氏から、トランプ大統領が就任し対中国への風当たりは厳しくなると予想される中で、中国として自律的にも取るべき政策として、輸出依存ではなく国内成長・生活水準の向上に切り替えられるか、国有企業の過剰設備を削減し、エネルギー効率を上げて経済のスリム化・強靭性が向上できるか等を3月5日の人民代で明確にするべきだとの主張が示されました。ただ中国の持つ対トランプカードとしては、ボーイング機の輸入・米国産農産品の輸入・米国債の売却があり、トランプ側も一方的な強硬姿勢には出られないだろうとも見通しも示していました。更に、中国の存在感が高まる中で管理的な金融システムの維持には限界があり、他方、外貨準備高の急速な減少と国際収支の誤差脱漏の大幅なマイナスの拡大から実質的な外貨保有力の低下とAIIBに回せる資金量の減少について解説があり、中国も内部矛盾を抱えながらのグローバル化世界の一員とならざる得ないことを浮かび上がらせていました。
- 2017.2.14
第184回MINERVAビジネスプラン発表会に参加。
― 1社目は、産総研発の技術を活用したカラー暗視カメラについて(株)ナノルクスの祖父江氏から説明がありました。人間の可視光波長と赤外線波長の相関関係を利用して暗闇でも色の識別を行いカラーで表示させる技術で、同社単体で製品化を進めると同時にユーザの製品への組込みを提案する逆オープンイノベーションのような動きを取っているところに可能性があり、ニーズは確実に存在するため製品化は相当早いと感じます。2社目は、温泉文化と健康管理を組み合わせた新湯治場ネスパを展開する(株)ネスパの川野氏から、従来の温泉事業コンサルの海外展開に加えて、予防医学の医療機器や病院との連携、関連情報のメディアでの発信、エネルギー事業等の新事業の説明がありました。中国等の富裕層を対象に新湯治場を展開すると面白いと思います。3社目は、(株)イージステクノロジーズの茅野氏から、沼津の解析・通信・ソフトに得意な同社と、ハード・ソフト全般に強いリバーランズ、メカ・躯体に得意なキャドPの3社が集まって、ロボットの躯体や機械部品、運搬機器を念頭に置いたデルタ機を開発している説明がありました。3本の柱を使い3軸均等に負荷を分散させた吊り「棚」を設け上下方向に軸に沿ってモーターで棚の支柱を上げ下げして重量物を円滑に垂直方向に移動させようとするアイデアは面白いものの具体化には相当距離があると思いますが、沼津高専の学生起業の支援も含めた意気には感心しました。
- 2017.2.2
第21回おおた工業フェアに参加。
― UHT(株)社長 松本 芙未晃氏の「『脱・下請け』のすすめ〜町の金型屋、世界へ〜」との基調講演を聞きました。先代の創業社長の夢を、自社技術の延長・横展開で、新製品の開発に何度か挑戦し、金型仕上げに使うエアーグラインダーの改良と自社製品の開発を実現し、その技術を最終的にセラミックの穿孔を行う装置の開発に応用し、自動化・空気吸入・小型化等と製品の高度化を進めて、実現した歴史を、社長が作った資料で自分の言葉で説明しておられ、感激しました。トップの意思を従業員と共有しつつ、ニッチで競争相手のいない分野において、自社技術をコアに、世界一を目指すとの基本的考えは、ドイツの「グローバルビジネスの隠れたチャンピオン」企業の基本と同じであり、同社も早くから海外にも市場を求めて展開してきている点で、我が国のMittelstand と実感しました。因みに同社の名前は、ユニーク(unique)な発想と誠意(honest)をもって独自技術(technology)の開発に挑戦していくという経営方針を社名にしたそうです。
- 2017.1.26
日本開発工学会第9 回技術ベンチャー叢成ワークショップを開催。
― 講師からの問題提起の最後としてS-factory & Co. 工場長 兼 ビジネスクリエーターの尾崎 典明氏から「技術系ベンチャーの明日を創る〜技術系ベンチャー支援の現場からみた課題あれこれについて〜」のタイトルで、九州工大卒業後直ぐに技術系ベンチャーに関わる選択をした後幾つか手掛けた支援事業の紹介があった後、技術系ベンチャーが遭遇する幾つもの課題について触れて貰いました。資金調達の困難に起因する死の谷の問題、公的制度に絡む手続き等の諸問題、大企業と技術系ベンチャーとの連携の問題等々多々課題がある中で、最近ようやく若手IT系ベンチャーの成功者が製造業系のベンチャーに対しても関心を示して支援に踏み出しつつある萌芽が生まれて来ており、このサイクルが良い方向で継続していくことの重要性を強調していました。支援活動が20年近くなり、若手でありながら多くの案件に関わった尾崎氏が引き続き支援活動を充実・継続していくなかで、技術開発ベンチャーの叢出と成長の良き循環が我が国に根付いていって欲しと思いました。
- 2017.1.24
第18回GPIC研究会に参加。
― 今回はドイツのグリーンパワー半導体の大手企業であるInfineon Technologies AGの日本法人であるインフィニオンテクノロジージャパン(株)のオートモーティブ事業部川田 健二氏から、自動車のCO2削減のトレンドと同社の取組みについて話を聞きました。ECでは2021年に向けて平均30%の削減を求めており、アッセンブラー、部品メーカーは既存技術の改良、軽量化に取り組んでいるが結局EVに向かい、インバーター等のGPICの重要性は一層高まるというのが結論でした。確かに数年の内に物凄い影響を及ぼすこととなると思いますが、従来の本研究会の議論との関係で言えば、Si利用の限界には至っておらずSiCは10年後になる、GaNは結晶を大きくできず製品保証も難しい、両面冷却構造の実現が同社にとって重要であるが、多くの日本企業が従来請求の範囲の狭い特許を日本国内を対象に多く取得しているので欧州で実用化することが優先されるだろう、との点が興味深く聞きました。特に最後の特許の点は、日本国内で日本勢同士で戦っているうち欧州で技術が実用化され大きな市場を押さえられてしまうかもしれないという、日本企業の戦略の問題が浮かび上がっていて、残念でした。